利き酒について

造りの仕込みもほぼ佳境に入りつつあり、精米等はもう終わり頃。
そんななか、変態系の仕込みとしてはラストの作品である、
秘醸酒「翠竜」の酒母が、完成間近です。
この酒母は、酒母のくせに、もろみのような三段仕込みをしなくてはならないので
かなりの手間がかかる代物です。

蔵元駄文-糖化

今年の「翠竜」は、設計を練り直したため、時間がかかり、仕込みが相当遅れました。

「純醸酒母」—–乳酸を使用しない酒母。
さりとて、乳酸菌を利用するわけでないから、山廃でもない。
あくまでも酵母に自ら酸を発生させ、それにより酵母自身に己を守らせるという酒母。

昨年は、産膜酵母がやや沸いたのか、若干シェリーっぽい香りがして、
それはそれで個性的で面白かったのですが、
今年は、酵母の純粋性を増すために、速醸酒母でもおなじみの、「打瀬」という
低温期間を設置するという設計になりました。

酒母がすべての酒ですから、設計は津川に一任。
今年は去年以上に、うまくいっているみたいです。

蔵元駄文-酒母三段

で、明日は利き酒の日です。
当蔵では、利き酒を定期的に行うんですね。
それで、醸造協会主催の「利き酒セミナー」などに行く人を選ぶわけです。
みんなを行かせてあげたいのですが、そういうわけにもいかないので、
せめて利き酒に執着のある、がんばった人を行かせてあげようというわけです。

明日は、8点マッチングを行います。
神経衰弱みたいに、8つの酒の正しい組み合わせを当てるわけです。
部屋の一方に8つの猪口があり、
反対にも8つの猪口がある。そしてそれは、一対一対応している。
それぞれ番号が振ってあり、制限時間以内に、正しい組み合わせを答える、
というものです。

3点くらいのマッチングは、わかりやすいので、
みなさんもご自宅で楽しんでみてはどうでしょうか?
私もけっこう遊びでやりますが、猪口の裏に、ポストイットを貼って、
組み合わせをあとで確認できるようにしておけばいいだけです。

あ、利き酒が上達するコツですが、
個人的な、あくまでも個人的なおすすめは、
歯磨き粉を使うのをやめてみることです。

よくいわれていることですが、歯磨きに関して、
歯磨き粉が果たしている役割は、さっぱりした感覚、ある種、麻痺に近い爽快感
を与えるだけで、実際、歯をキレイにするという意味での効果は、あんまりないのです。
むしろ、「磨いた気分になるので」、そんなぐらいなら
使わない方が良いという歯科医もいます。

さらに、私の見解では、
利き酒を極めたい人にとっては、歯磨き粉に含まれているような、
きっつい界面活性剤なんかは、長い目で見て、あまり味蕾に良くないのでは? 
とおもったりします。
歯磨き直後は、相当長い間、食べ物の味がなんだかわからないですよね。

中にはミントなんか天然の成分の作用もありますでしょうが、
洗浄成分そのものも影響を及ぼしていると思います。
例えば、ほぼすべての歯磨き粉に入っている、
洗浄/発泡成分の「ラウリル硫酸ナトリウム」、別名「ドデシル硫酸ナトリウム」という、
理系人間にはおなじみの界面活性剤がありますが、
けっこう洗浄能力は高いものですから、相応の刺激は避けられないのでは—-と思ったりします。

(問題は、歯医者さんが言うように、歯磨きで重要なことは、正しいブラシの使い方なので、
こうした界面活性剤の発泡能力とか洗浄能力は、それだけでは、あんまり役立たないことです)

もちろん、こうした化学成分は、入っているにせよ、
低濃度でもありますし、発がん性を含めた有害性も完全に否定されているので、
通常の生活をするぶんには、問題にならないです。
別に一般生活には問題なし、朝に口がすっきりするのはむしろ悪いことではないでしょう。

でも、辛いものを食べないとか、味蕾を大事にしたいとか、
日頃から食事に気をつけて、利き酒を頑張っている人には—–ちょっと気になりますね。

また、もとから口の中には、虫歯菌と対抗する多くの菌も生きておりまして、
それらはその人固有の菌叢を造っています。
毎日、朝晩? これらを根こそぎ「殺菌」するというのも、
常在菌のありようから考えれば、いささか過剰? なことのようにも思います。
(体や髪の洗浄にも言えることなんですが)

インド人は、貧富にかかわらず虫歯が少ないと言いますが、あれは、食後にうがいをするからです。
レストランの隅には、洗面所があってみんな、習慣的にうがいしますね。
あれで十分—–
というわけで、まあ使わなくてもかまわないくらいのものならば、
人によってはですが、使わない、というのもアリなんでは?
と、私的な提案をさせていただきまして、締めとさせていただきます。