「醸し人九平次」見学

まだまだ出張が続いているのですが、
昨日はなんと、見学したかった蔵のBEST3に入る、
愛知の「醸し人九平次」さんに行ってまいりました。

この銘柄、今でも一番多く買う酒です。利き酒のときには、必ず入れるくらいですし、
安定感があって個性的で旨いので、プライベートでもMAXに消費が多いお酒のひとつです!

そもそも「醸し人九平次」さんは、私が酒にのめりこむきっかけになった蔵の
ひとつでなんです。

もう4年以上前、はじめて日本酒にはまったのは、伊豆で飲んだ「磯自慢」でしたが、
その直後、衝撃を受けたのが「醸し人九平次」でした。

いくつか飲んだ中でも、「純米吟醸 雄町」が一番のお気に入りです。
濃醇で、美しい酸味が際立っていて、
磯自慢の抑制された美学とはまた違った表現を持つ、素晴らしいお酒でした。
それからは、「彼の地」「別誂」などなど、あらゆるアイテムを飲みまくりました。
あげくは私の影響で、私の弟も「九平次」ファンになったくらいでした。

—-ということで、今回、愛知に仕事で行くことになりましたので、
ここぞとばかり見学を申し入れて行ったわけでありました。

「九平次」さんにお伺いしたかったのは、
次の造りの原料処理、特に「蒸し」のためです。
具体的には、九平次さんで使用しているという「せいろ」を拝見させていただけないか、
ということでした。

というのも、今年から当社では、麹の米と掛米の蒸米を、別々に蒸したいということで、
(麹用の)小さい蒸し器が欲しいなあと思っているのです。

ところで、当社は手狭な蔵で、スペースがないので、据え付けの釜と甑では困る。
使わないときは、しまっておける、移動可能な蒸し器が欲しい! ということで、考えたあげく、
キャスター付きのせいろをお持ちの「九平次」さんに教えを乞おうと思ったのでした。

応対していただきいたのは、杜氏の佐藤彰洋さん。
一度だけ以前、ご挨拶させていただいたことがあったのですが、今回もまた、
大層緊張いたしました。気さくに接していただいて、感謝の限りです。

ちなみに、はじめ、私は、いきなり失礼をこいてしまいました。
蔵につくなり、おもむろに、でかい黄色いメジャーを取り出し、
「おたくのせいろの構造を教えてつかあさい!」
と発言したので、佐藤杜氏は顔色を変え、

「こいつ、いきなり大丈夫か? 安い菓子折りひとつ持参で、
あきらかに相当ハッピーな脳内構造の東北人がここに一人……」

と思ったらしく、はじめのうち、やや警戒させてしまったようでした。
実に、申し訳なかったです。
私が緊張気味で、挙動不審になり話を進めすぎました。

さて、話は戻りますが
「九平次」さんも、やはり、独自の酒造概念とこだわりに満ちあふれている蔵でした。

凡百の蔵では「そんなとこ、いいんじゃないの? 別に」とスルーしたり
するような細部に、異様に執着するのが、銘醸蔵の共通特徴。
「神は細部に宿る」というフローベールという作家の言葉が思い出されますね。

例えば「九平次」さんの場合は、洗米は必ず竹のザル。浸漬米の保管も、木製の容器。
せいろも木製、水は片道2時間以上かけて汲みに行く、などなどキリがありません。

逆に、細かなところにこだわりがないとか、
作業一つ一つに哲学がない蔵、そのため安きに流されてしまっている蔵では
あまりきちんとした酒を造れないように思います。

労力を惜しむような、人間的に適当な杜氏では問題外ですが、
気持ちが弱く状況に流されがちな、受け身の責任者のもとでも、
同様に、製品の向上は果たしがたいのではないでしょうか。

よく考えて、製品を良くしようと思ってやることであれば、
どんなことでも、決して「無駄」ということはないと思います。
特に日本酒は、単純作業で造られる工業製品でないのだから、
その取り組みが明確な効果を奏しなくても、その心意気がチーム全体を良い方向へ
導いていることだってあるでしょう。

また、ある工程を改善することで、仮に1%しか酒質が伸びなくても、100カ所改善すれば、
100%酒質が伸びるということもある。

だから、(理由はどうあれ)細部の、1%の改善を惜しむ人は、
永遠に成果を上げられないのでは? と思うのです。



さて、話は戻りますが、
結局のところ、見せてもらった「せいろ」は、想像と違って、蒸気直接吹き込み型。
配管構造も複雑で、当社で参考にするには難易度が高すぎました。残念です—–。
採寸する気も失せました。
ボイラー関係の特殊な装置も必要で、蒸気を綺麗にしたり、圧を変えたりということもいるらしく、
私には飲み込めないことも一杯でした。いつか出直してきたいと思ってます。

ともあれ、このたびは、酒造りのポリシーから、
販売/営業に関することまで色々とご助言をいただきまして、佐藤杜氏には感謝です。
当社の酒も利き酒いただき、感想もいただきました。これも、何よりの収穫でした。
(ちなみに、佐藤杜氏は、コードネーム「赤」の酒より、「桃」が好みのようでした)

長い時間をかけて、親身にご案内いただきまして、
どうもありがとうございます、佐藤彰洋さん! 

蔵元駄文-佐藤さん

で、その夜は豊橋にたどり着きました。
飯を食いに行ったら、地酒(地元以外の—-)がいっぱい。
駅前近くの「寅八」さんというお店でした。

いろいろメニューにありましたが、「越前岬」「国権」「天虹」「龍力」「青天下」—–
私は、いったいどれを飲んだでしょうか?

蔵元駄文-豊橋の店


答えは全部! 
ごっつい味の無濾過生原酒が多くて、かなり個人的に辛かったですが、
グラス半分のオーダーができたので、とにかく完飲!
 
おかげで、本日、午前はまた撃沈でした—-。
ではまた。