東北清酒鑑評会結果 & NEXT5共同醸造酒報告6 仲仕込み

NEXT5絡みの日記ばかりで、まったく忘れていましたが、
さる11/11、仙台にて、仙台国税庁主催の「東北清酒鑑評会」の結果が発表されました。
予想通りの大波乱が起き—。
秋田県の品評会で好成績のお蔵が何軒も、この比較的穫りやすい東北の賞を、
すっかり穫りこぼしたりということが、頻発しました。

秋田県での評価と、東北での評価が、今年は違いすぎる結果となったわけです。
酒を評価するポイントが違うのですが、これについては、どちらがいい、悪いというわけでは
ないものの、なぜ、こうも違うのか、深く考えなくてはならないことだと思います。
(私も秋田の品評会では、審査員の一人だったので申し訳なく思っています—-)

さて、秋田県勢としては、やや低調な結果であったともいえる、この東北清酒鑑評会でしたが、
それでも、ずば抜けて素晴らしい結果を残した、秋田の蔵がありました!

それは?

——-

「NEXT5」の最終兵器、「一白水成」を醸す、福禄寿酒造さん!!
蔵元の渡邉康衛くん!!

$蔵元駄文-こーえーくん

なんと、福禄寿酒造は、東北清酒鑑評会「吟醸の部」、首席!!!
総代として、賞状をいただいたとのこと。
つまり、福禄寿酒造は、昨季、東北全体で造られた吟醸酒の中で、最高評価の酒を醸した
ということ。これはすごい—–。
(以下、私は出席してませんので、いただいた写真です)


蔵元駄文-表彰式

当蔵は、「純米酒の部」で優等賞!
下の写真では、「県内版 佐藤卯兵衛」のボトルで出てますが、
酒の内容は、当蔵の鈴木隆杜氏の醸した「梨花(りんか)」と呼ばれる、
麹米 山田錦 35%
掛米 雄町  40% 
という、お酒です。これは、たいへん旨い! 
我が蔵としても、「純米」で穫れたというのが、また嬉しいことでした。


蔵元駄文-新政受賞酒

話は戻りますが、その、ワッショイ「首席」男、渡邉康衛くんが、ついに登場! 
彼の仕事は、原料処理だ! 
米を洗い、所定の水分量になるまで水に漬け、おもむろに水から引き上げ、脱水するという作業。
単純ながら、酒造りにおいて、もっとも重要な工程です。

ちなみに、福禄寿酒造の原料処理の精度は、県下で最高の精密さを誇り、
0.01%の誤差をも許しません。さすがは、市内の有名ホルモン屋で
「いっぱくクオリティ」と称される、徹底的なこだわり。圧巻です。

蔵元駄文-洗米ちゅうこーえーくん

康衛君は、素晴らしい洗練された動きで、どんどんと米を捌いてゆきます。
洗う、水に漬ける、抜く、脱水する、計量する! 一分の隙もない—–。
まさに「首席」的といえる天才的なセンス。

「米はともだち」「かわいそうだからご飯はあまり食べない」という彼独特のポリシーが
いかんなく発揮された、「留」の掛米の原料処理でした。



蔵元駄文-せんまいちゅう2


実際、「今までの、半年くらいの原料処理人生の中でも、まず、
最高の出来か、最高から2番目の出来だと言っても過言ではなかろう—–」
と、康衛君は、ガリガリ君をむさぼり食いながら、満足そうに答えてくれました。
また、康衛君は、ガリガリ君が、昔のまま60円であることに、ひどく驚いて、
「これは、まさしく『首席的』な取り組みである」と、高い評価を下しました。

ちなみに、今回、渡邉首席の原料処理の結果は、吸水125%目標のところ、126.2%の出来でした。
1.2%という少なくはない誤差が出たため、「ゆきの美人」の小林さんが、
「ガリガリ君を食っている場合ではない」と、苦言を呈しているシーンです。

$蔵元駄文-すみません----



一方で、私は、いささか良く踊りすぎた「添」を、
本仕込み用のでかいタンクに移す作業に。これを「添送り」といいます。
まず、添の入った小さなタンクを、これから移す大きなタンクの下に持ってきます。

ちなみに、受け手のでかいタンクの中には、すでに、仲仕込みに使う、
新たな水と麹が入っており、これを仲の「水麹」と呼びます。


蔵元駄文-そえおけ俯瞰

実際に、添を送ります。
こうやって、添の内容物を汲み出して、「ためし」と呼ばれるでかいアルミ製の桶に取り、
階上へ運んで、水麹が入っている大きいタンクの中に入れます。これ、けっこう面倒な作業です。
我が蔵の鈴木杜氏をはじめとする皆にサポートいただいて、添を汲みだしている現場です。


蔵元駄文-soe


最後に、米が蒸し上がりましたら、所定の温度に冷まして、
タンクに投入。
できたら、かきまぜます。NEXT5リーダーである「ゆきの美人」の小林さんの
チェックも通過! なんとか、仲仕込みは、うまくいきました。

蔵元駄文-小林さん櫂入れ

さて、明日は、ついに留仕込み!!
NEXT5全員が集い、仕込みを完成させます。

今のところは、パワフルな酒母、良質な水、美麗な麹、適切な原料処理が揃い、
添&仲の仕込み温度も成功しています!

うまく、いくのか??
乞うご期待。




ちなみに、同時に造っているお酒です。
これは酒母なのですが、ちょっと異様な風景。


蔵元駄文-亜麻猫

これは、クエン酸を大量に含有する白麹を用いることで、
醸造用乳酸を添加せずに、酒母を造っているところです。当蔵というか
当蔵の津川くん独自の製法で、単に白麹を使うだけでなく、
「高温糖化」をかませているのがミソであります。
白麹の持つクエン酸は、有機酸の中ではトップクラスに微生物汚染しやすいものなので、
衛生的にも扱いに注意せねばならないです。

(ぶどうの出来次第で補酸が行われるワインの世界でも、クエン酸は危険なので使いません。
酒石酸は、バクテリアが代謝しにくく安全なため、ワイン醸造では、ほぼこれが使われます)

ということで、白麹酒母は危険を伴うので、
本来はもっと寒いときにやるべきなのですが—–

さて、この酒母は、いずれ(うまくいけば)、当蔵の秘醸酒でも人気no.1の
「亜麻猫」というお酒になります。
今年は成功するのか?? こちらもちょっと気がかり—–。