dov(どぶ)!

蔵元駄文-dov

「DOV」(どぶ)——
この、あからさまに酒税法を挑発するカブキモノ的な名称を持つ酒をご存知でしょうか?
製造元は—-「白瀑」。
ではない、「菊源氏」というメーカーです。
静岡は伊豆の酒蔵なんですが、実は、
もう廃業されて長い事経っているお蔵さんなのです。

このお蔵さんは、実は「旭化成」がオーナーの会社でした。
しかし、同社は、2003年、酒類事業から撤退。
同社が保有していた「富久娘」などの酒蔵はオエノングループに営業権が譲渡されたものの、
この「菊源氏」については、静岡での現地生産は廃止。
銘柄名だけ、灘の「富久娘」に譲渡され、一アイテムとして売られるにすぎなくなってしまいました。

(詳細は以下のページに詳しいです ↓
http://www.dd.iij4u.or.jp/~kshimz/sake/kikugenji.html)

実は、当蔵とこの「菊源氏」さんは縁があります。
私が帰った初年度は、まだ山内村から蔵人たちが来て、酒造りをしていました。
その中に、かつてこの「菊源氏」で麹を造っていた方がいらっしゃって、
いろいろ麹造りを教わりました。

そう、静岡の「菊源氏」は山内杜氏の蔵だったのです。
小室恵一氏という名杜氏が赴任しており、
旭化成酒類事業撤退の前年は、名古屋国税局鑑評会で首位を取り、
その冬に杜氏が癌で死去、ほどなく蔵は廃業ということになりました。

小室杜氏の元で働いていた麹屋さんに、いろいろと教えてもらえたのは、
今思えば、超ラッキーなことでした。

さて、この「菊源氏」は、静岡最大の大きな蔵(というか、旭化成なので「工場」か?」)
だったので、冬期だけの仕事以外にも職があったため、山内村からは移住した一群もあったとか。

蔵元駄文-dov裏

その「菊源氏」の幻の低アル発泡酒、「sake sour DOV」!!!
懇意にしている酒屋さんから、なんといただいたものです。
2001年(?)らしき品物。未開封の超レアものですよ! 
もったいなくて開けられません—–。(飲んだところで怖いのもありますが)

裏側見ると、アルコール分は8%。
原料表記は、
醸造アルコール/糖類/酸味料/炭酸ガスとありますが、「清酒」表記。
普通酒扱いの、増醸酒になりますでしょうか。

まあ、低アルで発泡で、にごりで、添加物が多いというと、「マッコリ」と同じですね。

(別の機会に触れますが、なんでマッコリってあんなに人気になったんでしょうか?
 売れているので、勉強しようと手に取ったときがありますが、表示を見て完全OUT。
 醸造アルコール、酸味料、糖類/甘味料、アミノ酸、炭酸ガスほかいっぱいの添加物だらけ。
 アスパルテームとかも普通に入っている。
 原料の米は、どこのもので、農薬とか大丈夫なのか?
 あれにくらべれば、日本酒の普通酒なんて何倍もマシです。
 マッコリのすべてがああいう造りではないはずで、きっと本式のものは、きちんとした
 ものなんでしょう。
 ただし、コンビニ/スーパーで見かけるレベルのものは、
 発酵酒というか文化的飲料としての価値はほぼないですね。
 日本酒(特に純米酒)と比較しないでもらいたいと思います。
 しかし、なんだか抵抗感なく、巷では若者女性に大好評? 普通酒が飲まれないのは、
 添加物のせいでなく、単に香りと味などのせいなのかなあと言う気がしてきます。
 
 しかし、海外の日本酒も、安い熱燗の酒なんかがいまだに大手を振って市場を占めている
 現状、きっと同じように思われているのだろうなあ——)
 
ともあれ、このDOVは、清酒の範疇の代物。味もしっかりしていて、
けっこう、うまかったらしい。(と、麹屋が言ってました)

さて、この酒、実は麹に秘密があって、確かリゾープス類クモノスカビという、
中国の紹興酒を造る際に使用する餅麹のための、麹菌で造ったお酒だったはずです。たしか。
(インドネシアの納豆である「テンペ」もこのリゾープスで造られます!)

リゾープス類は、まあ、単なる普通のカビ。そこらじゅうに浮遊しています。
あらゆるものに生えますが、酸の中でも最高に酸っぱく感じる「フマール酸」という酸を生産します。
それを低アルの酸味補強に使ったのが、このお酒なんですね。

うちでも、黄麹以外の麹菌を使う事があります。
焼酎で使う白麹です。
これを用いて、まるで焼酎造りの「一次もろみ」を造るようにして、
似たような作法で酒母をたてることで、
醸造用乳酸を添加しなくても良い、「白麹もと」というのを考えました。
この商品名は「亜麻猫」。個人的に好きな酒です(あ、明後日、上槽です!)

え? クモノスカビはやらないのかって?
いや、無理。
このカビは、黄麹の何倍も繁殖力が強いので、こんなものを蔵に持ち込んで
培養したら、えらいことになります。

もともと酒屋で、納豆に次いで忌み嫌われているのは、ミカン。
カビが生えるからだと思います。こういうクモノスカビとかが—-。

自宅の押し入れで、例えばパンとかほったらかしにすると、餅麹のようなものができるでしょう。
それを麹の代わりに、炊いたご飯と水と混ぜ合わせて瓶に入れる。イースト菌を入れる。
これが「DOV」ができるかもしれませんね!

(以上は冗談で、アルコールが1%以上出ると、酒税法違反。
それだけでなく、カビた食品を摂取すると、健康を害します。
自然発生するカビには、大量の発がん性物質が含まれているので、皆様
日頃から気をつけましょう)。



ps
出品バトル酒は本格的に大詰め。

・「梨花 Ⅱ」は昨日火入れを終えて、完成。
まったくスムーズに、目論み通り、いや、それ以上の酒が完成したようです!

アルコール 17.2%
酒度 +0.2
酸度 1.2
アミノ酸 0.7

製造前の最終成分予想と、まったく同じ酒ができています。
しかもほとんど手がかからないで、スムーズにもろみが運んだようです。
まったく見事。


・「オクトパスガーデン2」
は、あと3~4日の搾りです。あまり今までに経験した事がないような変な溶け方をしたもろみで、
古関副杜氏は、相当てこずっていたようですが、さすがに彼も素晴らしい手練ですから、
実に見事にまとめあげました。
味は、やや酸が張っている酒質でしたが、後半によくまとまってきて、
期待感が増しています。「梨花 Ⅱ」とどこまで張り合えるか、
実に、出来あがりが楽しみです。


・「見えざるピンクのユニコーン Ⅱ」も大詰め。
ただ、またまたトラブルが発生。

もうΩは搾らなくてはならないのに、
αはなかなか搾りタイミング来ない——

なのに、搾り機の関係で(斗瓶取り以外の市販のお酒はミックスされた
ものになります)、ふたつをできるだけ近づけて袋吊りしないといけません。
これほどに違う経過のもろみを、最後にうまく調整して、
なんとか2日程度のスパンで連続して搾らないとならないのは正直厳しい。

こうならないよう、経過を気をつけていたのに—–うまく行ったとは言えません。
ということで、今すでに出来上がりつつあるΩの品温は5.5℃、
まだ発酵を続けなくてはならないαは7.7℃と全然違う品温に。

搾りの日取りのために、
どちらも最上のタイミングを逸して、失敗なんてことにならないよう
調整中です。