タイプ別の酒嗜好特性および、オークション品をちょっとだけ—-

蔵元駄文-最近の酒

趣味がとっちらかっている最近のMY蔵酒ですが、どれも美味しいですね。
いつもながら、日本酒には、いろいろな酒質があって、その多様さが面白いですよ。
実際、造り手としても、いったいどういう層に飲んでもらいたくて、
どういう酒を造るのかということは、特に重要だと思います。
今日はそこんとこの悩みを—–


例えば、日本酒をあまり飲まない人、よく飲む人では、おいしいと思う感じ方、
ポイントが違ったりしますよね。

先日、酒質設計に悩む同業者同士で、あれこれと話して結論づけたところによると、
日本酒をよく飲む人(私など造り手も含む)の中でも、典型的には、その嗜好によって、
おおまかに二つのタイプにわけられそうです。



つまり、

TYPEA=「日本酒は食中酒として食べ物と合わせてなんぼ」
という人と、

TYPEB=「日本酒はそのものの完成度を楽しむべき」
という人の2タイプです。

まあ、この時点で、なんとなく想像していただけると思いますが—–
その時、列挙した特徴を、今、書き出してみますと、

Aの方は、料理とお酒を込みで考える傾向があり、「飲み疲れする」酒を嫌うタイプかな?
「濃い」タイプはNGな場合が多く、「甘い」という言葉が、必ずしも褒め言葉になりません。
どちらかというと(料理を邪魔しないような)「飲みやすい」「さっぱりした」酒に、
高い評価を下す場合が多いです。レベルが高い人は、熱燗や加水など、
酒によって飲み方を変える等、みずから一手間かけることを喜びます。
また、ビール、焼酎等、ワイン、他酒類もよくたしなむ傾向にありそうです。
総じて寛容で、案外とアル添酒にも理解はある(?)。 また、生活感覚があるのか、
価格面=コストパフォーマンスも評価する傾向があります。
一定の条件で飲まないので、利き酒的な(=酒を同列の条件で比較する)見方を、あまりしない
傾向があるように思います。
本質的に、「酒の旨い/まずい」よりも、その文化的な背景等に、一定以上の興味を抱かれる方も
多いように思います。よく飲む方で、酒量も多いと見受けられるタイプです。


Bの方は、酒を単体で評価する傾向にある方かな? 
飲み方は固定しており、料理との相性はあまり考えず、単品利き酒的な酒質評価を尊重します。
飲み食いしながらではないので、味わいを酒そのものに求める傾向にあるようです。
結果、インパクトがあり、コク・旨味が十分な、いわば濃醇旨口な酒を評価する傾向にあります。
冷酒中心になるので「甘み」にも、かなり寛容な傾向があるようです。
(中には、旨味を求め、熟成が多少なり入ったお酒を好んだり、あるいは、
無濾過生原酒系などの新鮮な濃醇さを好まれる方など、いろいろとタイプがおられるみたいです。
ただし、総じてオフフレーバーに敏感なのか、いわゆる古酒はNGな場合が多い?)
このタイプは、日本酒に傾注する分、案外、日本酒以外の酒には、興味がない方も多いみたい。
どちらにせよ、このタイプにとって「軽快」は、酒の褒め言葉になりません。
傾向として、日本酒に投資する金額は非常に高く、コスパはあまり気にしないようですね。
あるいは、飯代を抜いて、高い日本酒を買うという感じかも。
酒は大好きだが、なぜかさほど酒に強くない人も。男性に多いタイプのように思います。



まあ、とりとめのない主観的なタイプ分けですが。
上記は、同業者数人と、ブレインストーミング的に列挙した特性の集合体で、
あくまで、そーとー極端な例です、あしからず。
こんな典型的な人は実際はおらず、私含めて、おおかたの日本酒ファンは、
「どっちか寄り」程度の感じで区分できる程度だと思います。

さて、こういうことを踏まえると、
どんな酒を造っていいのか、途方に暮れるわけですね。

私も、わかりません!!

やはり、「酒は嗜好品」というわけですか、違う嗜好の人みんなを、
同時に満足はさせられないわけです。


ただ、私に限って言えば、上記のタイプ別で言えば、思いっきりガチのBタイプだったのが、
時間を追うごとに、だんだんAタイプに近づいているようです。
そして、このたびの震災の件も影響しているのかも知れませんが、
どんどんそうなるような気がしています。

というのも、他の酒類も色々と飲む身から、客観的に判断すると、
単に「旨い/まずい」の尺度だけでは、つまらないというか、
必ずしも日本酒が今後とも、今以上に支持されうるか、やや疑問なような気がします。

日本酒の味が飛躍的に向上し、かつてないほど
旨くなっているといわれる現在においてすら、です。

無論、日本酒特有の味わいや旨さは重要ですが、それだけが日本酒の持ち味ではないように思います。
日本酒は日本の誇る文化的な産物であり、たくさん語るべきことがあります。
そういう歴史/風土的背景・ストーリーが、あらゆる文化的産物の魅力の根源だと
思います、最近は特に。 

日本酒を、その文化性を抜きにして、コンテストのごとく、一定の条件での利き酒などで、
すべての価値が決められるなんて、ああ、もったいない!!
それでは、狭い趣味的な世界から脱却できないように思います。
どんな酒も、さらに広大な食文化の一部、日本の郷土文化の一部でありますから、
多角的な方向から、楽しみながら、そこに潜んだ魅力を発掘していければと思います。

うーん、といっても、もちろん、あまりにまずいとか、手抜きが感じられるような酒では、
始めからダメですがね。
難しいです。





ということで、あまりに難しいのでそれはさておき、(さておくには長過ぎましたが)、
4/17開催 NEXT5 spring collection チャリティ試飲会 “Passion 2011″ @ココラボ
の、蔵元秘蔵品オークションの中身をちょっとだけ!

これは創業350年、秋田で一二を争う超老舗「一白水成」提供の、年代物のとっくり。
なんか「名誉賞」とか書いているし、これ出してもいいんですかね?

蔵元駄文-トックリ


当蔵からは、貴重な番傘です!
今日探してもってきたんですが、4~5代目の頃、大正時代のものみたい。

蔵元駄文-傘

開くと、屋号にでっかく「新政」。レトロ書体ぽくて好きですね。
たぶん、驟雨の時に貸し出したものでしょうか? ものすごい宣伝になる傘ですよね。
ごつい。落札した人、ぜひこの傘をさして駅前を歩いて欲しいものです。

蔵元駄文-開くと


そして、「ゆきの美人」さんからは、
なんと鑑評会出品酒とまったく同じ斗瓶からとった一升瓶。
つまり出品酒「まんま」の大吟醸が出ます。
通常、出品酒と言っても、実は、搾り方式が違かったり、
同じ袋吊りでも斗瓶番号が違ったりすることが普通なのですが、
これはまんま出品の斗瓶からとった一升瓶だということです。
こんなものは、蔵の製造部員クラスしか飲めないような酒です。お見逃しなく。

さて、他のお蔵さんも、すごいのを出してくるでしょう。
当日は、お楽しみに!