共同醸造酒 Passion 2011 報告 vol.10「もろみ立ち上がり」

さて、無事に仕込まれた「Passion 2011」

蔵元駄文-櫂入れ

ただいま、ちょうど、はじめの山場。
もろみ4~6日目は、どのくらい米が溶けたかを知るために、たいへん重要な時期なんです。

我々は、米の溶けを知るため「ボーメ」という尺度を使って、理解します。
これは、米が溶解作用を受けて、どのくらい液体化したかをはかる指標です。
つまり、糊(デキストリン)から糖分まで含むあらゆる可溶物を、重さで示したもの。
「比重」といわれる指標なんですね。
 
ちなみにボーメ換算での1は、日本酒度で10に値します。

仮に、アルコールがまだほとんど出ていない、米が先に溶けている状態の
4~6日目のもろみのボーメが7とします。
これは日本酒度で、ー70と表記されます。

この、ボーメ7= ー70の日本酒度(の中の糖分)が、どんどんアルコールに変化します。
ボーメ6、5、4と減って行きます。
酒度は、-60、-50、-40と変化します。

アルコールは比重が軽いので、アルコールが高くなってもろみの糖が少なくなると、
必然的に、比重=つまりボーメ(酒度)の値がどんどん少なくなってゆくのです。

そして、アルコールが多くなって、水の比重とほぼ同じになると、
日本酒度はゼロになります。
それより軽くなると、酒度は、マイナスからプラスに転じてしまいます。
日本酒度が プラス になるということは、米がしっかり溶けたということを前提として、
たくさんの糖分がきちんと相応のアルコールに変化して、発酵が完遂し、
結果として甘みがけっこう切れたことを意味するので、
蔵によっては、必ずプラスにまで酒度を切らす事を、完成の絶対条件とされている
ところもあります。

 

造り方にもよりますが、一般的に、4~6日目の最高ボーメの値が、
8以上出ると「溶けた」
7くらいだと「まあまあ」
6くらいだと「溶けてない」
とかかなあ——

このたびの「Passion 2011」の最高ボーメは、6.6とのこと。
やや溶けてないくらいと言えますが、美郷錦は溶かすと雑味が出そうな米ということで、
これは、さすがの小林さん、はじめから意図しての事。
(ちなみに酒こまちを使用した、前回の「Beginning 2010」の最高ボーメは7.6でした)

その証拠に、今回、ボーメ(比重)の値はやや低くとも、糖分(グルコース)は相当あるようで、
最高で7%くらいだそうです。
このように、希ボーメで糖度が高いというのは、つまり糖化率の高いもろみということで、
古来からすぐれた酒の指標です。
糖化酵素の力に富んだ、すばらしい麹が、これを可能にするんですね。

なんとな~くの、私なりの完成予想成分ですが

酒度 +5
酸度 2.0
アミノ酸 1.0
アルコール 16.5%

とかの感じかな~~~。(まるっきり違ったらすみません)
香り爽快、軽快ですっきりして酸味がしゃっきり立っていて、
かつ、日本酒度がプラスになっても、糖化率が高くて
糖分もある程度残っているので、適度な甘みも感じられるという酒になると思います!

ちなみに、これが”Passion 2011″のチラシです。
これは、世界観を伝える意味と、一般的に日本酒になじみのない方も興味をもっていただけるように、
そして我々としても酒造りの記念として、いつも造ることになってます。

蔵元駄文-チラシ1

蔵元駄文-チラシ2

相変わらずデザインも秀逸。”Beginning 2010″が化粧品ぽいチラシだったのですが、
今回は、テイストとしてはお菓子ですね。
パッケージに負けないような、粋な酒にしないとなりません。
出来上がりが、本当に楽しみです!(今回は、「ゆきの美人」なので、
実に大船に乗った気分です)

実際、期待大で、昨年よりも、予約が殺到しているようです。お早めにお近くの酒屋さんへどうぞ!



 

そういえば。
現在発売中の「食楽」7月号——
なんと表紙を我々NEXT5がジャックしているという噂が—–。

蔵元駄文-食楽

おおッ! 本当だ!!

蔵元駄文-発売前

詳しくは皆様、書店にて、御確認くださいませ!!