NEXT4 蔵見学ツアー!

さて、先日は、山口~佐賀というルートで、西日本蔵見学を堪能して参りました。
山口までは、<秋田県 醸友会>という技術研鑽団体による毎年恒例の”管外視察”という形でしたが、
そこから一転、佐賀へは例のメンツ”NEXT5”のメンバーで向かうことに。

というのも、以前、佐賀の蔵元さんに秋田に来ていただきましたので、
こちらも向かいまして、より深い技術交流をしたいと思ったわけでした。

仕込みのはじまっている「ゆきの美人」小林さんだけは、無念の不参加。
残りの四蔵、今回ばかりはNEXT4ということで、お邪魔することになりました。



まずは山口の「獺祭」さん!!
出身者が、かつて当蔵で働いていたこともあり、なじみ深い蔵ですが、
今回初めて見学させていただきました。
新しい蔵が竣工されて、ますます酒質が上がっているとのこと。期待大です。

実に衛生的な蔵で、作業性も満点です。
特筆すべきことはたくさんありますが、特に、仕込み蔵が年間通じて5℃という低温に保たれて
いるのは素晴らしいことでした。
電気代はかかりますが、年がら年中、真冬状態で酒造りを行っておられます。
地ビールなどでは、まあ当然なんでしょうが、酒造りではやっぱり
まだまだ珍しく、非常に刺激的な体験をさせていただきました。


蔵元駄文-仕込み蔵

そして ↓ こちらは「遠心分離機」。
「獺祭」さんの代名詞ともなったこの搾り機ですが、
開発者は、我が秋田の醸造試験場長である田口隆信先生なのです!
田口先生は、このほかにも、優れた麹を造るための自動製麹機など
様々な醸造機器を発明されておられます。

「獺祭」の桜井社長に、通常のヤブタと遠心分離機、それぞれで搾った酒を、
飲みくらべさせてもらいました。
さすが、遠心分離はたいへんまろやかで、同じもろみから採ったのか、と
驚く程でした。さすが田口醸長の機械です。いままで飲みくらべたことがなかったので、
正直あまり良さがわからなかったところがあったのですが—-
ああ、遠心分離機欲しいなあ。秋田割引って、きかないかなあ?

蔵元駄文-遠心分離機


そして一路、佐賀。まずは「天吹」さんへ。
創業300年—–。対抗できるのは、我々では「一白水成」の康衛君くらい。

このお蔵様は、壮観極れる凄まじい美蔵でありまして、
うっかり映画のセットに迷い込んだかと錯覚するくらいでした。
石垣なんかいっぱいあって、まさしく「天吹城」!
「謎の天吹城」なんて名前の映画でも造ったら良いと思いました。
エキストラで出させていただきたい。

蔵元駄文-天吹城

直売所の入り口もおしゃれすぎる!
それは「嵐」も来ますよね。(昨年、紅白歌合戦の取材で、リーダーの大野さんが来られて
酒造りをされたことが話題に!)

蔵元駄文-城入り口

このような美しい蔵は、残念ながら秋田にはありません—-。
製造現場の設備内装も、観光にパーフェクトに対応できる、整理整頓の行き届いたものでした。
まさにすべてが、映画セットです。
酒造りをしている人なんか、「謎の天吹城」(主演:大野智/嵐)に出演しているような
錯覚に陥らないか心配になってきます。

このように蔵がキレイだから、酒もキレイで、うまい。
さらに東京農大で開発された「花酵母」を使用するお蔵様なので、イメージも独特。

ただいま新発売の、苺酵母を使用した「モンスター」も、この蔵のイメージそのもの。
一点の曇りもない晴れ渡った味わいでした。
美しさとクリア感でこの蔵に勝る蔵を、私は知りません。素晴らしい見学をさせていただきました。

蔵元駄文-内装




それから向かいましたのは、「天山」さん。
無双の安定感と、辛口から旨口まで自由自在。
食中酒としてこの上を探すのが難しい程の香味バランスを誇る、
たいへん尊敬申し上げるお蔵様です!また、ここもロケーションがすごい。

蔵が思いっきりキレイな川に面しているのですが、ここは蛍の郷と呼ばれるところで、
シーズンには、たくさんの蛍が舞うところなのだそうです。

蔵元駄文-蛍の郷


蔵の中も、重要文化財だらけ—-たいへんに畏れ多いことです。
ただ、そういった文化遺産の中に、ほっとするシーンも。
こんなバーカウンターまであったりして、おしゃれですねえ。
蔵元の七田謙介さまの遊び心が滲み出ておられます。


蔵元駄文-けんすき

「七田」をはじめとする銘酒の数々を、じっくりと堪能させていただきました。
ありがとうございます。

蔵元駄文-バーで利き酒


その夜は、「鍋島」の飯盛さんも駆けつけてくれての夕食会になりました。
ご存知「鍋島」さんは、数日前、イギリスで行われたワインコンペティション
IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)の日本酒部門で、大吟醸の部首席、
全体においても第一位のトロフィーを獲得。
つまり「世界一」となりました!!
イギリスで受賞された後、すぐに帰国して、その翌日この会に駆けつけてくれました。
お疲れのところ、たいへんありがたいことです—-。

蔵元駄文-おめでとう会

会場のお店から、飯盛さんに、鯛の塩焼きのプレゼントが!!
ナイスなことに我々もご相伴にあずかることができました!

飯盛さんが、かなり苦労して、鯛を包む堅い塩のかたまりを、木槌で砕き終わった瞬間、
五城目の海原雄山と呼ばれる「一白水成」渡邉康衛君は、「おっほう、ラッキー」と叫びながら、
いきなり鯛の目玉に箸をつきさし、裏のゼラチン質をすごいスピードでGET&吸引!
「白瀑」の山本さんと、白熱の、おかしら争奪戦を繰り広げました。

そしてその様を見ながら、「春霞」の栗林さんは所用で佐賀を離れなくてはならず、悲しそうに
ひっそりと一人退席したのでした—-。


蔵元駄文-鯛出現


翌日は、NEXT3で、全国の酒造家あこがれの、あの誉れ高き「東一」へ。
蔵は、自社栽培の山田錦に囲まれており、圧倒的な壮観。

そして蔵の中も、見所満載!
製造部長である、かの有名な勝木先生の思想がちりばめられておりました。
木製のせいろ蒸し機、自作の発酵タンク、洗米ほかすべて木や竹といった自然の製品を多用する等、
古式ゆかしき製法の良さを取り入れた、素晴らしいこだわりようが満載でした。

現代的味吟醸の先駆者であり、そして最高峰である「東一」さんの、
底知れぬ奥深さを堪能させていただきました。


蔵元駄文-山田錦

蔵元駄文-東一社長と


そして、最後は「鍋島」様へ。
驚くべきことに、設備的にはごくごく普通の、手づくりすぎるほどの手づくり。
昔ながらの、何十年前から使っているような道具しかありません。

これであの酒質が達成できるならば、(合理化でなく)単純な酒質向上のためには、
設備投資なんてどこまで意味があることなのか? 不要とはいわないまでも、
本質的なことではないのではないか?
—–と、実にまっとうな衝撃を受ける程です。

ただ、特徴的なところもかろうじてあります。昨年導入した巨大なプレハブ冷蔵庫です。
この中で、酒造りを行うことで、シーズンはじめと終わりの酒質が安定した、ということです。
「獺祭」も同様でしたが、西日本であるからこそ、発酵温度の管理には、人一倍気を使って
いらっしゃるようです。

蔵元駄文-鍋島仕込み蔵

しかし、再度申し上げますけれども、基本的に設備的には、ごくごく普通のお蔵さんです。

それがここ数年、業界の話題を根こそぎかっさらい、ありとあらゆる賞を総舐めし、
先日は世界一にまでなってしまった—–。
その秘密を知ろうと思って、蔵見学を訪れたとして、私のように、
恥ずかしい思いを抱く造り手も多いのではないでしょうか。

日本酒造りに一番重要なのは、センスなのだとまた痛烈に思い知らされました。
まさしく、飯盛さんには「天才」という称号がふさわしい。

おめでとうございます!!

蔵元駄文-飯盛さん