Emotion 2011 酒母造り開始!

さて、12/24発売予定のNEXT5 ”Emotion 2011″ですが、
今回の布陣をおさらいしましょう。

酒母=前回の”Passion 2010″同様、私、「新政」の佐藤祐輔が担当いたします。NEXT5のメンバー全員、誰一人として、使ったことのない酵母を使用しますが、それが何かは内緒! 今回、酵母と麹菌については、余計な先入観なく飲んでいただきたいとのことから<非公開>ということになりました。

=「ゆきの美人」小林さん。自蔵では「蓋麹」製法ですが、今回は一白水成で行いますので「箱麹」(蓋よりもひとまわり大きい製麹容器)を扱います。さらに、麹菌についても、今までに誰も使ったことのない種を採用することになりました。この麹の出来こそが、Emotionのキーポイントですが、小林さんが担当ですから、出来の点はきっと万全でしょう。


使用水「白瀑」山本さんの仕込水である、白神山地の軟水が使用されます。これが通常の「一白水成」と、もっとも大きく異なる点と言えましょう。

(ちなみに「一白水成」の水は、いわゆる硬水です。ドイツ硬度換算で、5~6近くあるというので、秋田でももっとも硬い水といっていいでしょう。しかし、普通の硬水とは違い、酵母を活性化するようなミネラル<マグネシウムやカリウム>よりも、米を溶かすミネラル<カルシウム、ナトリウム等>が多いような感じです。発酵は穏やかで、米がよく溶ける水らしいです。とても滋味深く飲みごたえのある水で、かつ醸造に向いた素晴らしい水です。私は秋田県内の仕込み水の中では、もっとも個性がある良水だと思っています。
これに対して、「白瀑」さんの白神山地の水はミネラル分がほぼない超軟水です。
「春霞」の仕込み水である名水「六郷の水」といい勝負といえる、秋田の誇る素晴らしい仕込み水といえます。山本さんは、この水を自分の無農薬栽培田にもひいていますから、その恵まれた酒造環境については、実にうらやましい限りですね~)



洗米/蒸し(原料処理)=こちらは「春霞」の栗林さん。栗林さんは、NEXT5中、もっともまともな人間性を持ち、普通の社会生活を送る事のできる希有な人間です。NEXT5では(いわば–なし崩し的に)経理担当であるように、
実に信頼感溢れる安定した仕事ぶりを発揮してくれますから、この共同醸造酒第三弾では、酒造りで一番大切といえる「原料処理」を担当していただくことになりました!


もろみ=こちら、一ヶ月に渡ってもろみを管理するのが、ホスト蔵である「一白水成」の渡邉康衛君。
今回は、新たな設備投資をしたということですが、なんとEmotion用にその<何か>を使用させてくれる、ということ—-楽しみな限りです。


さて、このような布陣で臨む、”Emotion 2011″!!
まずはじめに「酒母造り」から始まります。

酒母とは、何か? 何度か書いていますが、おさらいを。
意味は、英語のほうがわかりやすいかも。
Fermentation Starter = ファーメンテーション スターター 
つまり、「発酵開始装置」です。
元気な酵母がたくさん生きている培養槽のようなものですね。これがちゃんとできないと、
タンク一杯のたくさんの物量を醸す事ができないのです。

すでに、「ゆきの美人」小林さんが、酒母のための麹を造ってくれていました。
無論、出来は申し分なし。
また、新米も昨年程悲劇的に溶けないような代物ではないということで、まずは安心。

ということで、私は11/5に、「一白水成」に行って参りまして、
まずは酒母仕込を行ってきました。

仕込みの手順ですが、寒い酒母室内に、小さな酒母用の仕込みタンクをセットします。
このタンクに、所定の量の仕込み水を入れます(もちろんこれも白神水です)。
そして、抗菌作用を持たせるため、所定量の乳酸を入れて、
次に培養酵母を入れて、そして最後に麹を入れます。
これを混ぜ合わせたのが、「水麹」というものです。温度は10℃くらいになりました。
以下の写真は、麹を入れた直後のものですね。

蔵元駄文-麹投入

これに、蒸した米を40℃くらいに冷まして、投入。
仕込んだ米をかき混ぜると、20℃くらいになります。これで、仕込みが完了です。
タンクにマットを巻いて、夕方まで保温しておきます

蔵元駄文-仕込み後タンク


夕方頃には、米全体が柔らかくなりますので、底に沈んだ麹を掘り返すようにして
全体を混ぜ合わせます。(これを荒櫂<あらがい>といいます)以下、荒櫂後の様子です。

蔵元駄文-仕込み後


まぜあわせたら、マットを剥いで保温をやめて、冷やすにまかせます。
酒母室の温度は7~8℃なので、一昼夜おくと、温度は10℃くらいに下がります。
丸一日、冷まします。これを打瀬(うたせ)といって、酵母を休眠させたまま、米をもっと
柔らかく、溶かすために行うものです。

ということで、昨日丸一日、打瀬をいたしました。
打瀬中は、温度が低く、10℃以下なので酵母はそう簡単に増えません。
この間に、米のでんぷんが、麹の酵素によって糖分にかわってくれます。
また、酵母のための栄養分も、米からいっぱい出てくれているわけです。

そんなふうに、まる一日の打瀬を経た今日(11/7)から、加温をはじめることにしました。
再びタンクにマットを巻いて、さらにタンクの下に電球を入れて、暖め始めます。
今日から、一日、2℃くらいづつ温度を上げてゆきます。
タンクの下が、電球によって明るくなっているのが見えますね。

蔵元駄文-加温

と、忙しい最中、お邪魔させていただきながら、私も「一白水成」さんの造りを勉強
させてもらっています。
「一白水成」の杜氏さんは、一関仁さん。秋田の若手杜氏としては、うちの杜氏の鈴木隆くん
と並んで期待度マックスのホープといえるでしょう。
彼と、酒造りの話ができるのも、楽しみで刺激的なことです。

(ちなみに「一白水成」とうちは、蔵元と同世代の若い杜氏が切り盛りする蔵です。
他のNEXT5の蔵は、それぞれ、小林さん、栗林さん、山本さんといった蔵元がそのまま杜氏
となってますが、私と康衛君は、杜氏ではありません。あしからず—)

さて、「一白水成」で働く蔵人さん達は、ほとんど五城目の「酒米研究会」に所属しておりますので、
「一白水成」のための酒米を実際に育てておられる方たちなのです。
自分で育てた米で酒を醸す—-とても理想的なことですね。

蔵元駄文-ふくろく

そして、ご存知、秋田地酒のホープ、「一白水成」福禄寿酒造・若社長の渡邉康衛くん。
農大出の「造る蔵元」として、朝も早くから、実際に現場で働いております。
今回の酒母の造り方も、彼と相談しながら、「一白水成」とウチとの中間的なスタイルを採ろうということになりました。

蔵元駄文-こうえい

その康衛社長が隠し持つ、Emotion 2011 専用の秘密兵器とは—–? 
次回乞うご期待。

蔵元駄文-冷蔵庫タンク