94%純米・・・

順調に酒造りは進んでいますが、けっこう寒くなったので、そろそろエクストリームな仕込みが飛び込んでくる頃合いです。

そしてきました低精米シリーズ、今年は「94%純米」です—–。

当蔵では2008年醸造の「80%純米」から始まって、「85%」、「90%」と「あまり削らない米での酒造り」をやってまいりました。現状、「90%純米」を年に1〜2本つくっているほか、一昨年前は「92%純米」を頒布会用に醸造しておりました。

今回のこの「94%純米」は、また恒例の頒布会用の特別醸造品になります。以前難航した「92%純米」よりさらに玄(くろ)い!!しかも、生酛からの立ち上げですよ。参ります。

そもそも生酛系酒母は、米を磨けば磨いたほうが良いのですね。磨いたほうが、初期には栄養が少なく、米の溶解性ひいては糖化性に優れ、結果として糖分が集積して「濃糖」になりやすく、抗菌効果が高くなって、早湧き(アルコール発酵力が弱い野生酵母が立ち上がってしまいうこと)を防げるからです。

だから通常当蔵は、酒母用の米は麹も掛もいっそ40%まで磨いてしまいます。酒母は全体から見たら5%程度の量です、しかしこれが完璧でないと酒そのものがうまくいかなかったり、レベルの低いモノになります。

酒母は(そして麹も)、全体量からすると少ない割に重要な役割をするので、いっそ削って質を上げたほうが、結局は得なんですね。

 

ところがまあ、当蔵の低精米シリーズは、技術訓練なので、麹や酒母もこればかりは、全部、掛米に合わせます。すなわち全部「94%」です。

 

 

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こちら食品用包装袋に入れた94%精米の麹&掛米。米が劇的に茶色いです。いつも真っ白な米に見慣れているので、この外貌には、ややグロい趣すら感じられます。

のちに解説しますが、これで生酛を仕込んで3日目の状態です。一般的な食用米は90〜88%まで削りますから、それより削ってないのです。今回は、栄養満点の米なのでおっかなびっくり。仕込水の汲水歩合も、総米換算の60%と、かなり詰めてます(教科書的には90〜95%汲む)。これも、水分活性を抑えることで、野生酵母の早湧や雑菌汚染を防ぐための手段です。

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こちらは拡大。飯米より、格段に一粒一粒がでかいです。よくみると、米の先端に黄色い胚芽が—-完全には取りきれていないのです。

おそらくまったく溶けず、危険な状況に陥るだろうと予想し、この米は5日も水に漬けました。おかげで予想よりはもっちりした感じです。なんとかなりそう!

この米入り袋を、1日2〜3回ひっくり返し、時々軽く手で揉んだりして、じっくり溶かしてゆきます。無理につぶすと、餅のようになってしまいます。びろびろの餅状につぶれてしまうと、不思議なことに、麹の酵素が効かなくなるのです。すると、粉々になるだけで溶けません! 溶けませんと糖分も出ません! すると「濃糖」にならないので、糖による抑制が効かず、ろくでもない野生酵母がゾワゾワ増えて、早湧きしたりします。あるいは、優良な酵母が立ち上がっても、増殖中にエネルギー不足に陥ったりします。

餅にならないように、うまいこと溶解糖化させていかないといけません。

今年の頒布会はこういうのばっかりで、きちんとリリースできるかどうか不安なところがありますが、我々、いままでいかに難易度の高い酒でもクリアしてまいりました! 今回もきっと、絶対にうまいこと成功させてみますのでお楽しみに!