もやしもんラベル

$蔵元駄文-もやしもん



実写ドラマの放映を記念して、
「もやしもん」特製ラベルの日本酒が出ていると聞いたのですが、
秋田では「天寿」さんが参加!! (農大関係ということなのでしょう??) 

いやあ、実にかわいいラベルで、私もほしいです!
味も、「天寿」らしい、バランス良く透明感あるテイストで申し分なし。
日本酒業界のために、いっぱい売れて欲しいですね。

さて、余談ですが、
この「もやしもん」にちなんだラベルですが、フジテレビがはじめに企画した段階では、
あまりにも、参加したメーカーの銘柄が目立たず、ドラマの宣伝色が強すぎたようで、
たしか原作者から、
一旦、NGが出たということがあったようです。

作者さんのブログを、今、見てみたのですが、とても誠実な対応をなさられた
のだなということがわかりまして、たいへん感動したところです。
酒造メーカーも期待に応えるようがんばらないとなりませんね。

ところで六号酵母も(確か)2巻で取り上げてもらってます。
欄外で説明してもらってまして、たいへん嬉しいことでした。
アニメ版(2007年放映)でも、登場しております—–



そういえば、言わずもがなですが、
この「菌劇場」、酒好きには、結構、突っ込みどころがありますね。

6号酵母(頭に「陸」と書いているのがいい!)の次は、
当然のごとく、7号、9号が続くかと思いきや、
なぜか、今はほとんど使われない8号酵母などが登場してます。

(この酵母は、6号の変異株ということで、醸造協会が開発したものですが、
最近のゲノム解析では、あらゆる協会酵母の中で、これだけ遺伝子が違うということが
わかりました。6~18号までみんな同じなのに、8号だけどうも「清酒酵母」を定義するための
遺伝子コードの配列が違うらしく、正統的な清酒酵母ではないようです。
8号は、濃醇多酸という特徴がありますが、もしかして、培養中、
野生酵母がコンタミしたのでしょうか——?)

で、次は10号。茨城の明利酒類「副将軍」さんのお酒とセットで紹介されてますね。
10号は、開発者の名前をとって、「小川酵母」と言われてます。
小川知可良先生は、退官されてから、「副将軍」さんに就職されたので、
その流れで、「副将軍」さんのお酒が取り上げられております。
ただし10号酵母の採取時期は、小川先生が鑑定官であったころらしく、
本当の採取元は、「東北の酒造場」であるというだけで、
いまだに、はっきりとわかっていない(小川先生が明らかにしていない)らしいです。

(そういう意味では、金沢局~秋田県醸造試験場長であった、池見元宏先生が採取した14号酵母も、
金沢のどこの蔵由来であったかは公表されておりません)

10号の次は、16号が出てますが、
岩手の「南部美人」さんのお酒が一緒に取り上げられていますね。
香り華やかで、「大吟醸」向きということで、イメージとしては、なるほど! という感じですが、
16号は、いわずもがな、協会酵母初の、カプロン酸エチル高生産酵母です。
セルレニンという抗生物質に対する耐性を酵母に与えると、
いわゆる「カプエチ」がぶんぶん出るようになるのです。
ということは、抗生物質でもへいちゃらな菌が、カプエチ高生産酵母ということ。
言い方悪いけど、まあ、これ、つまるところ「耐性菌」を人為的に造っているわけです。
20年前の、衝撃のデビュー当時は、コードネーム「no.86(ハチロク)」という名前でした。
その時、よくも悪くも、一時代を築いたおそろしい技術革命が起こり、そして(今なお続く)
バイオ酵母の時代の幕があがったのですね——。
ということで、この「セルレニン耐性」の技術は、「月桂冠」が開発したので、
16号の親と言えば、「月桂冠」になるのが妥当なのでしょうか?

まあ、もろもろございますが、制作サイドは、酵母一覧を見て、
「おだやか」、「濃い」、「キレイ」、「香り高い」
という、はっきりした特徴を見て、取り上げる酵母を選ばれたのだということが、
はっきりとわかります。
で、味わいも相当、違うですね、これらの酵母は。

私なんか、代表的清酒酵母といえば、
6、7(真澄)、9(香露)号—-あと、14号? 15号? 
とピックアップしたくなるところですが、
その視点がすでに市場的でなく、マニア過ぎるのかもしれません。

つまるところ、日本酒は些細なマニアックなことばかりで(このブログもしかりか??)、
肝心の味はさほど劇的な違いがなくて、わかりにくいから、
「もっとわかりやく!」「もっと個性が必要だ!」
という市場の声がここに詰まっているのではと解釈しております。
ではでは。