究の酒母造り
↑「究」の酒母造りがはじまりました。
学生さん達が毎日来られて、当蔵の酒母担当である津川のサポートで
一生懸命、酒母を育てています。
現場の仕事は、無論、我々の毎日の仕事ですから、私たちが先生となって、
教えることが多いです。
ただし、酵母の生理学的な側面などは、彼らのほうが詳しい。
我々では答えられないような質問が飛んでくることも珍しくはありません。
それはそうで、彼らは毎日、酵母や麹菌といった微生物を、培養したり、選抜したり、
比較したりと研究しているのですから。
彼らは、私たちが何気なくやっている日々の作業にも、
我々、現場サイドの人間が、見つけ出せないようなものを発見しているのかもしれません。
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例えば、彼は、今年卒業する院生さんで、佐々木 公太(23)くん。
実は、彼は、私が蔵に帰ってきた2007年の仕込みから、
冬期間、毎年、当蔵で分析の仕事をやっていた若者です。
(今年は彼は卒論発表のため、分析の仕事はしておりませんが、
我々は、四月からともに働くことになります)
思えば、三造り前の2007年(19By)は、激動の年。
私が帰郷すると同時に、33歳にして鈴木隆が杜氏就任。
あとは山内村の蔵人たちで酒造りをした過渡期とも言える年です。
アレは、思い出すにも悲惨なほど精神的にも肉体的にもハードな造りでした——
特に、鈴木杜氏は、惨い状況でした。
酒造りもまだ自信がない頃、おじいさんのような年齢の蔵人たちを相手に、
その派閥の調整役をしたり、一生懸命なだめすかして手間ひまかかる仕事をやらせたり、
彼らができない仕事は、私と一緒に体を張ってカバーしたり—–
お互い、かなり白髪が増えた年でした。
(2008年<20By>の、製造部立ち上げの年も、相当、
忙しく大変でしたが、わきあいあいと仕事をしていたので、精神的には楽しかったのです)
写真の佐々木 公太も、あの悲惨な、レアな体験をしているので、相当タフになったのでしょう。
大学院では、たいへん素晴らしい働きをしました。
秋田今野商店から発売されている「吟味」という、
雑味低減に寄与する種麹菌の選抜をメインで行ったのは彼ですし、
その後は、フィターゼという、麹菌が産生する酵素に着目した研究を続けてます。
蒸米の溶解に関する新しい研究成果をもとにした
彼の卒論は、酒造業界にとってもかなりの重要なものであると思います。
こんな感じで、「究」プロジェクトのおかげで、各部署において、
お互いの知識を交流し合うことができます。、
毎日、新たな発見や、大学発の新知識がもたらされ、
臨機応変に現場で応用されるという重要な期間です。
これが良い酒に結実することを祈るばかりです。