出品酒チーム経過報告7

さて、出品酒が仕込み終わり、ラストの杜氏チームの酒も、すでに7日目。
ぶっちゃけていうと、すべてのもろみに暗雲が立ちこめています!

まず、古関&津田の「スキンヘッズ」のもろみは、米が中盤から溶けまくり(いわゆる後溶け)、
糖分がなかなか減らず、酸もあがってきて、また、米由来のやや苦みも出てきた感じ。
「キレイ」なことを競う鑑評会では、酸が多いと不利!
そこで古関君は、櫂入れを極力省いて、もう米をちょっともつぶさない、味を出さないという戦略に
出ていますが、効を奏すか?

次の伊勢&森川の「新屋組」のもろみは、
はじめ米が溶けなかったのですが、あとから、溶けが追いついてきて、帳尻が合うようになりました。
また、もろみの最高温度が低いので、発酵力が劣り、アルコールが出ないんでは? 
と思われましたが、こちらも順調に出ています。成分上では、ベストポジションです、 
——が、甘みが消えてくると、なんか味が……若干、複雑すぎ。
これは「老(ひ)ね」た麹を使ったことに由来するのでは? 
詳しいことは省きますが、吟醸の麹は、菌をあまり繁殖させず、見た目をキレイに造るぶん、
長い時間をかけて造る場合があります。つまり、少ない菌で大量の酵素を作らせるため、
時間をかけるわけです。しかし、あまりに麹を造る時間が長過ぎると、
今度は、麹菌が造った酵素が、麹自身を溶かしはじめてしまい(自己消化)、
麹は、分解物を多く含んだ、「味のある」ものになります。
こうした麹を「老(ひ)ね麹」といい、こうした麹が酒に入ると、酒の味を濃醇にしてしまいます。
市販酒なら、味わい深くて良い酒ですが、鑑評会では、これまた、相当不利な要素です。

次の、私(佐藤)&三野「寅年年男」チームのもろみは、
予想通りのボーメ(溶け具合の指標)、予想通りのグルコース(ブドウ糖)濃度となりました、が。
扱い馴れてないタンクのせいで、温度設定をミスり、酵母のたち上がりが遅れました。
すると、米の溶解糖化が、発酵よりどんどん進み、そのせいで酵母がダメージを受けて、
もっと発酵は遅れ—-の最悪なスパイラル状態が数日続きました!
しょっぱなから危篤状態。まさに、私はここ数日、看護士状態になりました。
濃すぎる糖分を薄くするために、毎日水を入れて。さらに白熱灯を、タンクの上部空間に垂らして、
もろみの温度を間接的に上げて、発酵を促して——という作業で、酵母を救出してました。
まあ、もとからアル添しないんだから、そのぶん、水を入れて酒をキレイにしようと設計してたのですが、ちょっと溶かしすぎたみたいですね。実際、予想外な展開になり、やや焦りました。
昨日くらいから立ち直りましたが、まだ退院初日くらいです。もろみも、まだまだ甘過ぎ—。
これからどうなるやら。

鈴木杜氏&津川チームのもろみは、「雄町」という溶けやすい、味の多い米を使用しているので、
溶けないように手を打ったせいか、はじめの数日は、あまりに溶解性に乏しく、
大変心配になったのですが、今頃になって、じわじわと溶け続けてます。
普通は、溶けの指標を表す「ボーメ」という値は、3~4日目に最高値になり、
それから、どんどん減っていきます。
このもろみは、今日で6日なのに、低空飛行を続けながら、まだじわじわ上昇し続けています。
結局どのくらい溶けているのかよくわかりません。こんなデータは過去にないので
(私のもろみもそうですが—)相当、やりにくい。予想不能です。

いい意味で、四つのもろみとも、個性豊か。「酸」が高すぎる、「濃醇」すぎる、
「甘」すぎる、「どう操作していいかわからない」。
見ていて、とてもエキサイティングですね。一本も、安心できるまともなものがない! 
蔵元としては、気絶しそうです! 

いや。ここから挽回してこそ真の造り手!
乞うご期待!