秋田の酒 おもしろ大研究 & 出品バトル酒報告 「瓶燗」

蔵元駄文-白瀑悲話

3/4(金)、NHKの秋田ローカル番組「あきた・夜・金」にて、日本酒の特集が放映されました。
番組名は、「おもしろ大研究! 秋田の日本酒」!
秋田在住の方はご覧になられたでしょうか?

なんといっても、今回の主役は、白瀑の山本さんでした。
「ど」誕生悲話をはじめ、彼の今までの奮闘ぶりが克明に追いかけられた、
一ファンとしてもたいへんためになる番組でした。いやあ、涙が出そうになりました—-。

生中継のスタジオでは、山本洋子さんの司会のもと、
ルー大柴、林マヤさん、みんなでNEXT5の「Beginning 2010」を
番組の最後の酒として乾杯してくださってありがたいことでした。
これを機に、秋田から日本酒の人気爆発! になったら、嬉しいですね!!


一方、当蔵では、三年目を迎えた、産学共同開発酒「究(きわむ)」の仕込みが。
美酒王国「秋田」ならではとでもいうべきでしょうか、
秋田の公立大学である「秋田県立大学」では、なんと「醸造学講座」といって、
2年間、ガチで酒造りを勉強するクラスがあります。
このクラスでは、優良酵母の選抜分離、麹菌の開発等も行ってまして、
たいへんレベルの高い研究が日夜行われている場所なのです。

こうした取り組みを続けている秋田県立大学と、我が蔵がコラボした作品が、
この純米吟醸「究」。
漢字は、「学究(がっきゅう)」という言葉の「究」から。
そして、発音は「きわむ」といいます。

今年は、醸造学講座だけでなく、応用生物学科全体の取り組みへと拡大し、
「究」プロジェクトは三年目を迎えて、とんでもなく話がでかくなりました。
なんと、大潟村フィールドセンターにて米造りから始めましたから、なにからなにまで(水以外)
100%県大印。

以下は、仕込み風景です。当蔵には、県大のOBが二人おりますので、
学生達は先輩に教えてもらいながら、仕込みを一緒に行っております。

蔵元駄文-究



で、今日は、出品バトル酒の最後の完成の日。
「オクトパスガーデンⅡ」と、「見えざるピンクのユニコーンⅡ α、Ω」の瓶燗火入を
行いました。

「え、だって10日以上前に上槽でしょ、まだしてなかったの? ヤバいんじゃない?」
という同業者の声がちらほら聞こえますが—–

イエス。本当はもっと早くやりたかったんですが、美山錦ってやたら渋くて苦い。
ぐーんと味がのらないと話にならず、なかなか火入れができなかったんです。

古関くんは、氷温庫に入れて微妙に熟成をかけていましたが、
私は、我慢できず、最後の5日くらいは、8℃以上の温度帯で保管しました。

澱下げや調熟の際の生酒の保管については、普通は、5℃以下。できれば
氷温が推奨されているのですから、
こんな8℃以上などという温度帯で放置するのは、いくら味を乗せるにしても、
本当はやってはいけないことです。

生酒期間が長いor 生酒での温度が高いと、「生老ね」という香りがでます。
ハーブの匂いと形容されることもある、アルデヒドの匂い、酸化によって生まれる匂いです。
(ちなみに私は「虫かごの臭い」と言っています)

これが出たら、即OUT!!!!! 出品酒としての価値を一瞬にしてすべて失うので、超リスキー—–。
でも、やらざるを得なかったです、だって、一週間後の「秋田清酒品評会」に間に合わないと
ならないのです。

で、今日までひっぱって、やっと火入れ。
結果、うーん。ちょっと、生老ね、出たかも? 気づかれるかなあ—–。
出来に関しては、ちと残念です。ただし、これは今の自分の実力。
搾った直後のギスい味では、とうてい闘えなかったし、仕方ないと自分を慰めています。

瓶燗風景

蔵元駄文-瓶燗

古関君の「オクトパスガーデンⅡ」は、なかなか良い出来。
私の「見えピンⅡ」は、この生老ねっぽいのがあるようなないような点をのぞけば、
α(アルファ)、Ω(オメガ)ともに、はじめの理想形に近い成分の酒になりました。

しかし、成分が目標通りだからといって、もちろん、いい酒かどうか限りません—–。
正直、「梨花 Ⅱ」にはやられたように思います。

蔵元駄文-急冷

秋田県清酒鑑評会への酒の送付は、一週間後。けっこう近いです。
このため、瓶燗後は、特に気合いを入れて急冷します。
というのも、うまく急冷すると、火入れ後の酒にしばらくつきまとう
「火冷め」というオフフレーバーが出にくいのです。

が、勢い余って一気に冷やすと、バリバリ瓶が割れます。
私はなんと4本も、古関くんは1本、それぞれ威勢良く割ってしまいました! 
ああ、斗瓶取りの大事なお酒が——-無念。


思いっきり底が割れて酒が流れ出してる風景 by 古関

蔵元駄文-急冷し過ぎ


結局のところ(まあ成分では、味のことなんて何もわからないのですけれど)、
「平成23年度 全国清酒鑑評会」に出品候補のお酒は、以下の出品酒が揃う事に
なりました。

*ちなみに、県産米100%、純米であること、六号酵母系統のみ使用
(今のところ「六號改<カプ系>」は、混和していい)、という三条件を遵守がルールです。

で、これらの中において、今月中旬に開催される「秋田県清酒鑑評会」にて
もっと成績が良かった酒が、晴れて「全国」に出品される事になります。


・「純米大吟醸 梨花(りんか) Ⅱ」酒こまち38% alc 17.2% 酒度 +1 酸度 1.25  アミノ酸0.65 グルコース2.0%

・「純米大吟醸 オクトパスガーデン Ⅱ」美郷錦40% alc.16.9%  酒度 +1 酸度 1.55  アミノ酸1.05 グルコース 2.2%(火入れ前)

・「純米大吟醸 見えざるピンクのユニコーン Ⅱ」美山錦35%
“α(アルファ)” alc 17.6% 酒度+3.2 酸度1.40 アミノ酸0.80 グルコース1.9%(火入れ前)
“Ω(オメガ)” alc 17.2% 酒度+1 酸度1.65 アミノ酸 1.0 グルコース3.3%(火入れ前)

私の「見えピンⅡ」は、「添」仕込みまで同一のもろみですが、
「仲」仕込み以降を二つのタンクに分割して仕込んだわけです。
やっぱり「α」と「Ω」を造り分けるのは難しかったですが、こう見ると、しっかり
造り分けがされていた感じ。「仲」以降は、配合も温度経過もまったく違うのでこうなります。

甘酸っぱい系統を狙った「α」は、終盤、動きがとまって、おしまいかと思いましたが、搾ってみると、
まあ闘えなくもないような気がする酒質でした。ただ、香りがほとんどない。
コンテストではかなり不利で、抑えとして造った「Ω」のほうが、鑑評会としては有利でしょうね。

振り返ってみると、むちゃくちゃ勉強になったトライでした。
やって良かった。ただ、やっぱ味は、たぶん、「α」と「Ω」双方より、
総合的には「梨花Ⅱ」のほうが上かと—–。

ただし、勝負はわかりません。私の酒も、古関副杜氏の「オクトパスガーデン Ⅱ」も、
すべての酒が健闘する事を願っています!!


さて、瓶燗の様子を、またyou tubeにアップなどしてみました。ではでは。