本日、広島で、全国新酒鑑評会の一般公開が開かれました!
今回は、うちの鈴木杜氏の「梨花 Ⅱ」が、秋田県清酒品評会で、当蔵の
他の酒(つまり私と副杜氏の酒)を抑えて、もっとも高い評価だったので、
それが出品されるということになりました。
実際、秋田県品評会で好成績で、直前のテイスティングでもそんな悪くなかったのに、
当蔵の「梨花 Ⅱ」は、金賞、入賞(銀賞)にも入りませんでした。
うーん、残念。
そこで、当蔵の杜氏は、本日広島に向かい、どうなっているのか利き酒いたしました。
電話で我が杜氏と話しましたが、
「崩れてもないし、致命的な欠点もなく、入賞もできなかった理由がわからない」
ということでした。
当蔵は、現在、秋田県産米の酒造好適当米100%で、酒を造っております。
また、できるだけ純米酒を造りたいということで、この出品酒も純米大吟醸で醸すという試みを
実践しております。
コンテストで純米造りは、基本的に不利です。
醸造用アルコールを添加した、軽快で飲みやすいいわゆる大吟醸が大半のこうしたコンテストでは、
純米造りは、どうしても「味が重い」、「渋い」、「堅い」などの欠点は指摘されやすいものです。
実際、杜氏曰く、「渋い」「堅い」などの指摘は、相当あてはまるだろうということですが、
本人としては納得いかなかったようでした。
私も最近、この出品酒を、数度利き酒をする機会にも恵まれておりましたが、
確かに、そこまで大きなミスがあるようには思えませんでした。
とはいえ、結果は結果。
物事にはすべてなんらかの意味があると思います。
結果を真摯に受け止めつつ、一方であまりそれに惑わされずに、対処するのがいいですね。
例えば、今回、秋田県は事前の予想より、はるかに少ない金賞の数しか取れませんでした。
30ちょっとの製造場が出品し、最低でも金が16くらいは堅いと言われたのに—–
結果としては11個の金賞だったとのこと。
そこで、金賞を取るための戦略の見直しが必要では—-という論議が
どこかで持ち上がってくるのかもしれません。
まあ、現実を冷静に分析するのはいいと思います。
とはいえ、私としては、自分の蔵についても言えるのですが、
今回の結果を深刻にとらえすぎて、今までの方針をやたらと変更してしまうには及ばないのでは?
と思ったりもします。
今年はいろいろありましたから、例えば、出品手続きが延長されたりもしましたし、
審査員としても、様々な心理的な影響を受けたところがなきにしもあらずだったでしょう。
では今回の結果をどのようにとらえたら良いのか—-?
さて、2週間くらい前になりますが、
広島で最終審査が行われたのと同じ日に、秋田の醸造試験場でも、出品酒と同一の酒を
利き酒するテイスティングの審査が行われていました。
これは、広島での保管状態を完璧に模倣することで、広島で今まさに審査されている酒を、
そっくりそのまま再現し、これを秋田の技術者で利き酒するという取り組みです。
大事なことは、この銘柄を隠した利き酒(ブラインド)で、造り手が、自分の酒に、
いかに評価を下してたのかだと思います。
もし「1」(良)をつけておらず、「2」(並)とか「3」(問題あり)と評価したのなら、
当たり前ですが、自分の酒について、もっと改善の余地はあるということです。
ただし、自分で自分の酒を「1」とつけたのなら、その酒が、実際のところ、
広島で金を取ろうが選外だろうが、関係ないのだと思います。
造り手は、自分の舌で満足するものを造ったのだから、胸を張るべきだと思います。
利き酒の訓練を欠かさず、真摯に酒と向き合っているものが、「1」をつけた
のなら、その酒は、どうあれ正しいものであって、これに対して改善すべきこと
はないのだと思います。
鈴木杜氏は、2週間前、秋田で行われたブラインドの利き酒の際、
自分の酒に「2」をつけていたそうです。
ですから、悪い酒ではなかったのですが、強いて言えば、もっと改善の余地はあるのかも
しれませんね。
無論、私、副杜氏の酒は言うに及ばず—–。
既存の鑑評会的な枠組みにとらわれて造りをまげるつもりは毛頭ないものの、
自分が満足できる純米大吟醸を出品できるよう、来年はもっと頑張ります!