酒母完成! 添/仲麹も完成!

御無沙汰しておりました—–
あれやこれやとあまりにも忙しく、めまぐるしく日々が
過ぎるうちに、Emotion 2011の酒母も完成!

今回使用した酵母である、”X” (非公開です)は、
どうやら、あんまりゴージャスな「香り系」にはならない模様—-。
なんとなく酸度もやや高めになりそうかな?

さてさて、今日は、「一白水成」さんのお蔵には行っておりませんが、
ちょうど「ゆきの美人」小林さんが麹造りに行ってらっしゃるので、
以下、写真を拝借。

蔵元駄文-添1

これ、康衛君が、何をやっているかというと?
—–以下にご説明します。

「添」仕込み、と呼ばれる作業なんですね。

「添」の手順は以下。
1、完成した酒母を、酒母タンクよりひとまわり大きなタンク=「添桶」に移し替えます。
2、そして、添麹と水を、酒母にかぶせて入れます。これを添の「水麹」といいます。
3、最後に、蒸し上がった添の掛米(蒸米)を、「水麹」にかぶせて入れます。
4、かき混ぜた後、12~13℃くらいになっていれば—–

三段仕込のうちの、はじめの段である「添仕込」が完了!

さて、ここで不思議に思われる方もいるかもしれません。
なぜ、いきなりでかいタンクに入れないで、わざわざ、小さな「添桶」に入れるか?

これ、温度が下がりすぎないようにするためなんですね。

「添」の翌日は「踊り」。段仕込を一日だけ、お休みして、ある程度高い温度で、
酵母を増殖させる日なんですね。

*ちなみに三段仕込の流れ ↓
 一日目:添(初段)
 二日目:踊
 三日目:仲(二段目)
 四日目:留(三段目)

つまり、「踊り」で酵母が増殖しないと、それ以降、ちゃんとした発酵ができないおそれが
あるのです。

こう考えてみると、いきなり「添」を、本タンクに仕込んでしまうのは、ちょっと怖いのです。
寒すぎる日などは、「添」程度の物量では、本タンクの底に、うすーく広がってしまい、
どうしても冷えすぎてしまう。ぜんぜん踊らない。酵母が増えてくれない。

これを避けるため、ジャストサイズのタンクで「添」を行い、
しっかり温度を保ち、酵母をちゃんと「踊らせる」目的で、
添桶を使うのです。

一方で、こうした「添桶」を立てないスタイルを「すっぽん」と言います。
あったかい時期とか、酵母がやたら元気とか、
断熱性がいいタンクとか、タンクの底部が球形になっており「添」の物量が広がらずに収まるとか、
そういう様々なケースでは「すっぽん」仕込みでも、一切かまわないと思います。


蔵元駄文-添2

さて、酒母~添と来ましたので、明日16日は踊り。17日仲仕込み。
そして、ついに18日には留仕込み。
NEXT5全員が「一白水成」に結集して三段仕込のクライマックスとなります。

私の予想は、爽快な香りと、特徴的な酸味、バランス良く調和した甘みの
素晴らしい酒になるのでは? という気がします。
「ゆきの美人」小林さんは、ちょうど今、麹菌 ”X”(これまた非公開) を使用して、
パワフルな糖化力の麹を造ってくれました。

Emotion 2011、悪いものになるわけがありませんね!

蔵元駄文-麹



さて、私の最近はといえば、Emotion 2011の酒母造りだけでなく、
蔵の仕事と、もろもろの事務雑用で、たいへんでした。
そういう時に、事故は起こる。

思えば、仕込みの初期にも、酒母を仕込もうと思って、仕込み水をタンクに入れたら、
栓をしておらず、あっというまに水がだだ漏れ。
酒母室中がびしゃびしゃになってしまいました。

先日の大ミスは以下—-↓
最近のお気に入りの「高温糖化」という酒母製法をやっておりましたところ、
急いで作業をしすぎて、アホな失敗をやらかしました。

この「高温糖化」という酒母は、甘酒を造って冷まして、酵母を入れるという段取りで造るものです。
具体的には、55℃くらいで酒母を仕込んで4~5時間そのままキープ。、短時間で蒸米を糖化させるのです。よ~く溶けたら、冷たい水を入れて冷まして、酵母添加。
これで仕込みが終了。その後、15℃くらいで一週間ほど保温すると、
酵母が増えて酒母が完成! という代物です。

熱の力で、麹の酵素力を活性化して、合理的に短時間で糖化を終了させるほか、
同時に、高温で雑菌も淘汰できるのがこの製法の良いところ。
麹由来の雑菌や野生酵母が死滅するので、清酒酵母の純粋性では、ピカイチなんです。

(高温糖化、なんていうと、いかにもすごそうな酒母製法みたいですが、いたって単純。
単に蒸したての熱~~い蒸米を、すでに麹が入っているお湯に入れて、
かきまぜてしばらく保温。甘酒を造るときとまったく同じ作法です。
むかーしむかしは、「煮モト」という名前が付けられていました。
現代にこの製法を復活させたのは、広島の中尾醸造「誠鏡」さんでございます!)

さて話は戻りますが、私は(先ほどの添桶の話と同様なんですが)温度持ちが良いように、
小さなタンクで糖化を行うのが好きなんです。

蔵元駄文-糖化中

そして冷ます時に、冷水が入った普通の酒母タンクに、糖化した液体を入れて冷ますのですが、
いそいそと移し替えているとき、足下が滑ってしまい、ひしゃくから内容物をぶちまけて、
頭からあつい糖化液を被ってしまいました—–。
髪も服もべたべたで、酒母室の掃除にも時間がかかるわで、大変な一日でした。

ほか、もろみでも心配事が勃発。
米が溶けなさすぎて(昨年産の古米で仕込むもろみはやっぱりそう)、
酵母も元気なく、発酵が弱そうなもろみが出ましたので、試験場に健全度を調べて
もらうことにしました。

これが、採取したもろみをシャーレの培地に塗って、拡大培養した酵母(もちろん6号酵母)です。
1万倍に希釈してありますが、乳酸菌などはいないようです。
前半ぐずついたものの、雑菌汚染はいっさいないということで、ほっとしました~!

さて、計算すると、128個のコロニーがあるとのこと。
これらコロニーはもともと一匹の酵母から増えたものなのです。
ということで、逆算しますと、1.28×10の8乗個、
つまり、1mlあたり1億2千800匹の生きた酵母が存在する計算になります。

汚染もないし、まずまず酵母数もあって、健全というところで一件落着。
でもこのもろみは、あまり無理させず搾りましょう。

蔵元駄文-酵母

そして先日、市内の有名ホルモン店「タカラヤ」さんで、
早くも、NEXT5グラスを発見!!
こういう風にして広まるといいなあ。

蔵元駄文-タカラヤ