鈴木杜氏と古関副杜氏に、好き勝手にやってもいいと担当してもらっている、
当蔵の純米大吟醸の仕込みなんですが、古関君の担当酒が、先日、上槽。
今回は、昔、自社で選抜した、華やかな香りが大量に出る六号酵母の「六號改」は、封印してます。
というのも、「六號改」については、市販酒では、昨年からもはや使用しておらず、
コンテスト用の酒だけに、微妙に酵母ブレンドして使っていたくらいでした。
(でもかなりいい株なんで、誰か使ってみたらいいのになあと思っています)
そして、今年は、市販酒の袋吊りから出品するので、ついに完全に「香り」(コンテストで求められるような高い香り)とは、無縁の造りになりました。
いわゆる6号、7号、9号といったクラシックな酵母(一桁酵母)は、
こういったコンテスト向きの華やかな香り、つまりカプロン酸エチル(=「カプエチ」
=リンゴやパイナップルといった甘い香り)を、あんまり生産しないんですね。
そのかわり、酢酸イソアミルという、バナナのような(強くなるとやや除光液にも似た)香りを
多く産出します。こちらの香りは、コンテストでは逆に、「エステル」として
減点対象になることもあります—-。
さて、誰も香りなど求めてない6号酵母で戦うというのは、毎年のことながら、
かな~り不利ではありますが、味でカバーできないかというもくろみと、
かつ技術訓練の意味で、戦ってみたいのです。
実際、搾った古関副杜氏の酒にどのくらい、このコンテストで重視される
カプロン酸エチル=「カプエチ」が含まれていたか、というと、造り方が良かったのか、
調べたら微妙に出ていた!
数値で言うと、2ppm。
いつもうちの吟醸では、カプエチは2ppmも出ず、1とか1.5ppmなどが
普通だったので、副杜氏よくやったという気分です。
味も膨らみあって軽快だし。素晴らしい!
ちなみに酵母によって、カプロン酸エチルがどのくらい出るか? という点について比較すると—
(米を磨いて、低温発酵した場合、つまり吟醸造りでは)
・「7号」は「6号」と同じようなもんでは? やはり、もちっと出るかな?
・「9号」では2ppmくらいは、ざらに出るかも。
特に発見者である「酒の神様」野白先生が在籍していた「香露」さん(熊本県酒造研究所)が
配布する「熊本酵母」(=香露九号、活性九号)とかなら、3ppmまでいくのかな?
・「10号」は、カプが9号より出るとか聞いたことがありますが、実際よくわかりません。
10号って使ったことないんですよね。
もううちの蔵では無理なので、いずれ、NEXT5の共同醸造酒で使わせてくれないかなあ。
・「14号」は、「9号」とどっこいだと思います。
・「15号」では、4~5ppmくらいは普通に出ます。
・20年前に、抗生物質を用いた突然変異技術によって生み出され、
最近の香り戦争の引き金をひいた、元祖カプ系の「16号」は8~9ppm以上出します。
・「きょうかい酵母」最新で、今や多くの蔵が愛用するカプ系酵母「18号」、あるいは「カプ系の王様」と言われる「明利酵母(M310)」を使うと、ざらに10~12ppmくらいでます。
とはいえ。
全国新酒鑑評会などの公的コンテストでは、最近、香りがあんまり高すぎてしまうと、
敬遠される向きもあるので、蔵側も、香りが少ない酵母を混ぜたりして、
やや香りをセーブするようになってもいます。
それでも、このカプエチという香りは、いまだに最も重視されており、
実際出品酒の傾向を調べてみますと、7~8ppmくらいが、激戦区となっていますね。
つまり、16号以降の酵母を主体に戦わないと、お話にならない、という現状があるのです。
では、カプエチ2ppmでは、絶対に金賞が無理か—-。
というと、100%そういうことでもないのです!
実は、新酒鑑評会では、香りが低い酒のため救済策(?)として、「香り区分」というのが
設けられてございます。
香り(カプエチ)が低いものは、低いもの同士でグループ分けされて、審査されるのです。
(まあ、香りが低いグループの金賞受賞数はそもそも少ないみたいのですが—-)
ということで、我々の蔵から、新酒鑑評会に酒を出品する場合、
香りがもっとも低い第一グループで審査を受けることになります。
このグループでは、9号系(きょうかい9号や熊本酵母)や、14号などの酵母で
醸された酒がほぼすべてを占めると思います。
ここには「春霞」さんとか入ってきますね。
9号系単体で勝負するって、栗林さん言っておられましたから(ですよね? しかも美郷錦で?)。
ま~お互いそろって、受賞といきたいもんですが、なんとかなんないかなあ—-。
明日搾る、私担当の、改良信交40%磨きの純米大吟醸は、それこそ香りが低すぎて不利すぎるし。
古関君のになんとかなってほしいなあ。
(という期待を背負って、出品酒のお酒を火入れ殺菌している副杜氏の古関くん)
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さて、お知らせです。
恒例の頒布会が今年もやってきました!!
思えば2008年の「新政物語」
から、しっかりした企画の気合いの入った頒布会に様変わりして、
徐々に内容がマニアックにエスカレートし、
2009年は「蔵人からの便り」
2010年は「すばらしき酒米の世界」
2011年は「流派対決 in 新政 2011(山内流vs能登流vs蔵元流)」
とやってまいりました。
やってる我々も、驚くような凝り様です。
新政社会科見学シリーズとか、学習頒布会とか、巷で呼ばれているくらいです—。
そして、
2012年は—-
「すばらしき純米酒の世界」
というテーマで御案内いたします。
冷静に考えると、
死ぬ程忙しいのですが、もはややっちまいます! チラシも造ってるし!
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本年度は当蔵の創立160周年でありまして、これを記念する意味でも、頑張ろうと思います。
当蔵の開拓している純米酒の世界の一端を、(特に地元秋田県内の皆様に)垣間見ていただきたいものです。
白麹モトや、貴醸酒など、一部の「限定酒」と同等の技法を用いたお酒が含まれています。
醸造方法も管理も難しいお酒のため、通常は、販路限定/数量限定でご案内させて
いただいているものなんですが、今回、あえて「頒布会」に投入いたしますことで、
普段、専門店に行かれない方にも、「こーゆー酒もあるんだ!!」という驚きを知ってもらえる、
そして専門店で日本酒を買うきっかけにならないかなと考えています。
こちらは、昨年同様、秋田県内を優先してご注文をいただきておりますが、
県外でも名門酒会加盟店様の一部では、お取り扱いいただいております。
お客様につきましては、どうしても手に入らない場合、
こちらから県内外、最寄りの酒屋をご紹介いたします。
あまりにも入手困難な場合に限り、代引き手数料と郵送費がかかりますが、お届けも可能ですので
お問い合わせください。
(1500口限定で、頒布価格は一回につき3000円です。
四合瓶が2本ついておりまして、最後の35%磨きだけ500mlですのでよろしくお願いします)
お問い合わせは
info@aramasa.jp
まで!