木桶について

みなさまあけましておめでとうございます!
この1月は最繁忙期でございます。
申し訳ないのですが、ブログを更新する暇もなく、連日、酒造りに没頭しておりました。

木桶

木桶につきまして。発酵は、予想を裏切りまして、素晴らしく順調です。
木は断熱材のようなものだから、発酵中の熱が外部に発散せず、
もろみの温度を抑えることができず発酵が進みすぎるだろう……と思ったのですが。

これ以上なくうまいことコントロールされています。

温度がぶっ飛んだら大変なので、私はもろみを冷やすための道具をいろいろと
用意する段取りをこしらえていたのです。

しかし、醸造長の古関くん曰く、

「単に冷温器(長いアルミの筒で中に水や氷を入れる)をブッさせばなんとかなるんじゃないですか」という強気の発言。
さすが90%精白などの難易度の高いもろみ管理で鍛えられてきただけはあります。

あんな細い筒に氷水入れただけの代物で、本当に木桶のもろみが冷えるのか?
まじかよ……と思いながら、「じゃーやってみてよ」と様子を見たら、
全然余裕の冷却能力。
そうね、木桶、小さいですもんね……。
杞憂でございました。

古関醸造長は

「かえって木が断熱材になって、外気の影響をまったく受けないので
コントロールしやすい。1~2月の厳冬期に、冷え込まないのがむしろ嬉しい。
むしろ最高」

と余裕の発言。
どうやら、彼も、木桶を熱烈に愛するようになってしまったようです。
これで来季から木桶が増えること間違いなしですね(?)。

そして味は…?
もろみの分析用の濾液を飲んでの感想なのですが—–

和を感じさせるウッディなテイストが、そこはかとなく感じられる、
たいへんデリケートで奥深い味わいになりそうでございます。
個人的にも楽しみでございます。

さて、この木のテイストについて……
当蔵では、24Byはオーク樽貯蔵もやりました。オーク(楢)の香味はやや威圧的な
ところがありますが、あれもいいもんですね。
しっかりした味の酒に樽添えすると、時々、とんでもない相性を見せてくれます。

またこうした杉の木桶仕込みの酒。あるいは樽酒も素晴らしい。
私など数千円も出してシダーウッドのアロマオイルを買ったりするくらいですから、
特に好きなテイストなのですが、鼻に抜けるあの爽やかな杉の含み香は格別で、
これこそ、日本酒に取り戻すべきニュアンスでは……と思ったりいたします。

なぜ、日本酒は、千年以上も一緒だったはずの、この杉の表現を手放してしまったのでしょうか。
合理性だけで手放されたのであれば、悲しむべきことであります。

もしかして。
日本の芸術には、「付け加える」のでなく「削ぎ落とす」と言う素材文化/ミニマル志向の
傾向が強いところがあります。

樽香は、特に「吟醸」的な表現にとっては、そもそも酒の香りではないので、
「邪魔もの」として排除されたのかもしれませんね。

しかし、この「吟醸」……日本酒業界の伝家の宝刀であった「吟醸」……も、
時代の流れとして、必然的に、陳腐化しつつあります。

「吟醸」は偉大な先達たちの手によって100年ほど前にその原型が生み出された
至高の発酵芸術とでもよぶべきものですが……
長い間、日本酒業界はこれに代わる新たな「武器」を手に入れることができずにいます。

そして吟醸は、今や収穫の時期に入ってしまいました!
とりわけここ数年「一般的」になり、かつ最後の「消費段階」に突入しています。
製法は極限に洗練され、大量生産も可能になりました。

昔は、各蔵でタンク2~3本しか造れなかったような大吟醸/純米大吟醸が、今や、
(質のほどは保証しませんが)コンビニ・スーパー・百貨店と、
名前ばかりはそこらじゅう溢れるようになってしまいました。

吟醸の魅力が、世間一般、あまねく人々に知られることは素晴らしいことです。
現に、最近日本酒が見直されている(?)としたら、それは吟醸のおかげといっても
過言ではないでしょう。

しかし、吟醸を生み出した先達と同じだけの努力が、それ以降ほとんどなされていない、
あるいは、なされていたとしてもピントがずれている、
もしくは、努力のわりに明白な結果が出ていないのであれば問題です。

次はどうなるんだ—–、吟醸の後はどうなるんだ—と、
そこはかとない不安を感じている蔵元さんも少なくないでしょう。
だからこそ我々も、我々自身のため、そして我々以降の世代のためにも、
遅かれながら「ポスト吟醸」の形を探ろうと、同胞の若手蔵と切磋琢磨しながら、
場合によっては訝しがられる可能性が高いかもしれない変態酒を、
凝りもせずに果敢に造っているわけです。

そういう意味では、木桶にしろオーク樽貯蔵の酒にしろ、木のテイストをまとった酒は、
吟醸以前の伝統だったり、もとから日本酒の枠外にある文化であります。
ここ一世紀、日本酒業界が意識を集中させてきた既存の吟醸の美学とは、
かなりずれたラインにありますから、
私ととっては、生モト/山廃や、貴醸酒、白麹、低精米の酒と並んで、
特に将来性が見込まれる面白い対象なのです。

今年は木桶&樽酒でいろいろと可能性を追求したいと思ってます!
あ、気合いが入った樽酒(出来た酒を樽で保管するヤツで、木桶仕込みではありません)は、
本年度の頒布会でやろうと思っております。


神主

1/11は、蔵開きの日でした。
神主さんにお祓いをしてもらいます。現在、氷温庫を建設中で、建設現場も
お祓いしてもらいました。


袋吊り

さらに……。
純米大吟醸の袋吊りも始まりました。こちらは美郷錦30%精白です。

袋上


斗瓶

全体の1/3を過ぎ、試行錯誤や調整もそろそろ終わり……。
米質との相性を探るため、こまごまと微妙に配合を変えたり、
いくつかの温度経過を経過を試したりしていましたが、まずまずわかって
きた感じです。

さて、これから、本番でございます!!
今年もよろしくお願いします~