出品酒チーム経過報告3
出品酒チーム、ラストの鈴木隆杜氏×津川正隆の麹造りが始まりました。
このチームは、麹米に山田錦、掛米に雄町という組み合わせでやってもらいます。
私は、六号酵母は、雄町とたいへん相性が良いとにらんでいるからです。
この雄町という米は、岡山が主な産地であり、東北ではあまりなじみがない酒米です。
我々の蔵でも、近年、やっと一昨年から少しずつ、使用を「復活」させたばかりの米です。
溶けやすく、一歩間違うと、味が多く、ダレやすい酒になります。
しかし、抑制した造りを心がけると、熟成するにつれ、香味は上昇し、素晴らしい味わいに
変化します。
あくまで個人的にはですが、
山田錦(この米は、簡単にいうと、雄町の息子にあたります)に勝るとも劣らぬか、
それ以上に素晴らしい酒米だと思います。
それほどこの米は、奥深く、不思議な変化を魅せてくれるのです。ただし、扱いが難しい。
誰にでも扱える米ではないのは確かです。
ちなみに、当蔵は、かつてほとんどの酒を、雄町と亀の尾によって醸していた
時代がありました。五代目の時代、大正~昭和初期です。
このため、私は、亀の尾か雄町が六号酵母の原初の培養槽だったはずです。
また、どちらかといえば、50%前後に高精白した雄町のもろみが、より近い存在であった
ように思います。
まず、秋田などという寒いところで、あえて、地場産の硬質米(亀の尾)とは真逆の性格の、
異様に高価な雄町米を、西日本からわざわざ買い取って使用していたというのは、
異例のことでした。
(当時、まず雄町などという米は秋田では手に入らなかったようで、五代目は大阪時代に
独自の入手ルートを築いていたことが伺えます)
話は戻りますが、「秋田で雄町」。このギャップにこそ、六号酵母の、当時としては
比類なく高い性能の秘密が隠されているのではないか、と私は思ってます。
全国津々浦々、青森から九州まで一様に安定した醸造を可能にした画期的な醸造能力は、
地域性にとらわれない取り組みから生まれた、と考えると面白いものです。
ということで、もし雄町のもろみが、六号酵母の「母なる海」であったなら、
雄町でこそ、六号酵母による最高の酒を醸せるのだろうか?
なんていう飛躍した発想につながったわけです。
ということで、杜氏、頑張ってね。