おいしい日本酒とはなにか

兼ねてから思っていることですが——-

日本酒は、頑張って造れば造るほど、みんな似てしまうのだなあということです。
もし、コストはどうでもいいから、おいしい酒を造ってくれ! と言われれば、
たぶん、たいていの酒屋は、「おいしく」しようとして、米をできるだけ削る。
50%、40%と削ってゆく。つまり大吟醸になりますね。
そうなると、必然的に良い香りを出そうとして、優秀な酵母を使う。
特に素晴らしい香りを出す酵母を。
そうなると、リンゴ様のゴージャズな香り高いものになってくるので、
辛口ではミスマッチで、けっこう甘くする。

もちろん麹は、吟醸麹。突きハゼという手間ひまかかる形に仕上げます。
それから神経をはりめぐらせて、コンマ1度の精度をもって、仕込みを行います。

ほとんどの蔵で、留仕込みの温度を6度にしたりする。
その後は、ゆっくりと温度を上げてゆく。
1日1度未満の昇温が理想です。酸が高くなりすぎるので。
最高温度は、だいたい大吟醸クラスで11度くらいでしょうか。

そうして、神経をすり減らし、もろみ期間30日を耐え抜いて、
やっと搾ったと思ったら、生酒期間に酒が悪くならないように、
できるだけ早く、火入れ殺菌。あとはもちろん低温貯蔵。

そうしてできるのは、あら不思議!
確かに旨いが、北海道から宮崎まで、原料も水も、違った人も何もかも違うのに関わらず、
かなりそっくりな、立派な吟醸ができあがります。

「日本酒は、水も米も違うから、場所が違えば、同じものができない」といいますが、
それは造り手というか技術者、それに近い人のややマニアックな台詞だと思います。
米がほぼ、でんぷんになるまで削って、同じような酵母使って、限界まで香りを出し、
相当に甘くすれば、原料米や水がどうであれ、
一般的には、かなり味わいの近いな酒にならざるを得ないように思います。
(お前の腕が悪いか、舌がおかしいと言われれば、それまでです。すみません—–)

ところで、市販酒は、確かに蔵によって相当クオリティが違います。
あれだけ違うのはなぜか?
むろん、市販酒には大吟醸のような画一的なマニュアルはなく、
比較的、蔵独自のスタイルが発揮される場ではあります。
ただ、実は、それだけではなく、本当に重要なのは、貯蔵管理の差と思ってます。
搾りたては、どんな酒だって、なかなか美味しいです。
飲めないくらいまずいというのは滅多にないです。
結局は、管理が良ければおいしい、悪ければまずい。
これが、市販酒の味を左右している最大のポイントだと思います。

となれば、高級酒が旨いのは、ある意味、管理が良いからと言い換えても良いです。
いかに大吟醸と言えど、安酒並のてきと~な管理では、旨くはならないのです。

なんてことを、ごちゃごちゃと考えながら、
ここまでに搾られた出品候補酒を飲んでいます。

・古関のは、ボディがあって、後味軽快で悪くない。うまくまとめてきた感じ。
・伊勢のは、残念だけれど、出品酒としては味が多すぎる。だが、もっとも香りは高い。
・私のは、まだ生酒です。やや軽快にすぎるので、火入れまでもう少し時間を取ります。

けれども、酔っぱらったらもう、きっとよくわかんないよね。どれも。
うーん、確かに旨いことは旨い、よくきけば歴然な差もある、
しかし、「蔵特有の」「米特有の」おいしさが表現できる日本酒とは、
こっちの方向には、絶対にないと思いますね。

実際、複雑です。