なんと、昨日は
私、佐藤と三野の出品酒第三番仕込みの「搾り」だったにもかかわらず、
私が出張になってしまい、秋田を離れざるを得ませんでした!
ということで、杜氏に「袋吊り」
(=木綿などの目の細かい袋にもろみを入れ、その自重で、液体部分=酒だけを
布から押し出す、もっとも酒にマイルドな上槽方法。袋吊り、袋取りなど言います)
をお願いしました。
搾りまで、杜氏におまかせしてしまうとは、ふがいないです。ごめん杜氏。
当蔵では、斗瓶(袋吊りした後に酒を入れておくガラス製の丸い瓶。18L入る)
を4本くらい取ります。
無事に終了しまして、杜氏に利き酒してもらったところ、
曰く「斗瓶の最後のあたりはけっこう苦みがでてたけど、
はじめのほうは大丈夫。まあ、ふくらみはあるよ。
でも、うーん、平凡かもしれないなあ」
………平凡。
わかる気がします。
風格が足りないんですね。
自分なりに、純米で賞を取れそうな経過、溶解糖化バランスにしたんですが、
極端にやりすぎたところがあったのは否めません。
軽快にすぎた? アルコールが低かったか?
心当たりは満載です。
ただ、まだ酒は変わるので、ゆっくりかまえておくことにしましょう。
今は、「オリ引き」といって、
数日かけて粕の微細な粒子を沈殿させ、清澄な部分だけを取り出す作業になります。
だいたい早くて3日、遅くて5日くらいです。
この「オリ引き」期間は、搾ったままの状態です。つまり生酒の状態です。
搾ると、酵母は取れるので、アルコール発酵はストップします。
ただ、酵素は酵母よりずっと小さいので(酵母は生き物ですが、酵素は単なるタンパク質です)、
搾ったときには取れません。酒にずっと残っています。
そうすると、酵素作用で、ブドウ糖やアミノ酸だけは生産され続け続けるわけです。
オリ引き期間は、単なる生酒であるだけではなく、
オリ(つまり粕)が絡んでいるので、味わいが相当変わる、つまりどんどん甘く、
味わいが濃くなってしまう時期なのです。
これを終えて、「火入れ」します。
60~65度くらいの温度に酒を熱することで、
まず、酒にもしかして潜んでいるかもしれない雑菌などを退治できます。
そして同じくらい重要なことには、
酒を変化させる「酵素」を壊してしまいます。
こうして、晴れて日本酒は変化しにくい完全な形になるわけです。
こうした加熱殺菌は、英語で「パストリゼーション」といい、
つまり名前の由来は、パストゥールという学者さんが考案したからなんです。
欧米では1866年に開発されたということですが、
日本酒の世界では、火入れによって腐敗を防いだり酵素失活させたりすることは
室町時代からすでにごく普通に行われていたことでした。
で、この加熱の最中にも、酒の味は変わるわけですね。
温度がかかるので、成分が変わり、まだ味はぐんと濃くなるのです。
ということで、どこまで化けるか、どんな酒になるか、楽しみです。