愛醸蔵

当蔵には、リアルの蔵、土蔵の蔵が、敷地内に、6つあります。
戦後まもなく大火災にあって、木造建築は全部おしゃかになりましたが、
これらの蔵だけは、残りました。窓をぜんぶ閉めていたから助かったそうです。

通り沿いに白壁が並ぶ、敷地内で最外郭の三つの蔵は、「感恩講」(かんのんこう)
と名付けられてます。
これはもともと、秋田久保田藩の所有物だった蔵で、
飢饉の折りに、民に供給する穀物を備蓄しておく倉庫だったということです。
これらの3つの蔵は、現在貯蔵庫になってます。

そして残り3つは、蔵の敷地の中心部に組み込まれており、仕込み用として使われてます。
一番でかい豪華な蔵は、製造数量が少なくなったので、今使ってません。
中には、からっぽのホーロータンクがずらっと並んで、今も残ってます。
このタンクを軒並み出して、この蔵は有効活用しないといけないなあと思ってます。

残った中規模の蔵2つで、お酒が仕込まれてるんですが、
蔵の真ん中にある、「やまウ」の屋号が刻印されたメインの蔵は「愛醸蔵」(あいじょうぐら)
と言います。
 命名は、うちの杜氏である、鈴木隆。「和醸良酒」をモットーに日夜体を張って酒を醸し続ける
サケ・サムライです。
 
で、出張から戻ってきたら、ラミネート加工されたカンバンが、このメイン蔵に貼ってあり、
驚きました。

蔵元駄文-蔵1
「愛醸蔵」! 
 —-いつか、杜氏のために、木彫りのカンバンを造って掲げてやりたいと思った次第です。

そして、残るもう一つの仕込み蔵。こちらには、小さめのタンクが並んでいて、生酒の貯蔵用、
あとは純米大吟醸などの小仕込みが行われます。「六号酵母」が発見された蔵、としても
有名です。

ここの蔵の名前は決まってなかったので、蔵見学者に説明するためにも、
なんかイカした名前をつけてやりたいなあと思っていたのですが、
なんと、今日、行ってみたら


蔵元駄文-蔵2

「醸熱蔵」(じょうねつぐら)!
なんていうカンバンがあるではありませんか。
いつの間に貼ったのかわかりませんが、本日は、杜氏が農作業のためにお休みの日だったので、
まあ昨日のうちに貼ったんですね。

ともあれ、「醸熱蔵」(じょうねつぐら)!
うちは「長期低温発酵」がモットーなのに、そんな酵母が熱を出したら困るじゃないか、
と一瞬思いましたが、高級酒は、冷え込み傾向で発酵が遅れがちなのもありますし、
ちょっと熱が出た方が良かったもろみもあるし、これはこれで良いとしよう。

いや、熱を持って醸すのは、我々、蔵人なんでしょう。
ただし、最近、風邪ひきが多いので、そういう熱は出さないようにしてほしいです。

しかし「醸熱蔵」(じょうねつぐら)! いい名前だと思います。
ただ、私も実は、いい名前を考えていたんです—–。

以前、誰も頼んでもいないのに、
まるで松尾様(酒の神様)が憑依したかのように、
杜氏がメイン蔵を、突然、前触れもなく、「愛醸蔵」と命名した時、
「あ、いいなあ」と、私も蔵に名前をつけたいと思いました。

そして、先日、私が杜氏に相談したことには、

この残ったもうひとつの仕込み蔵の名前についてだが、
「愛醸蔵」に対して、双璧となる蔵となる意味で、

「欲醸蔵」(よくじょうぐら)

はどうだ? と持ちかけたんですが、
なぜか相当な勢いで大反対されました。

ということで、杜氏は早急に自分で名前を決めてしまったんでしょうね。
「醸熱蔵」。まあ、なかなか結構。

「欲醸蔵」は、別の蔵のため、とっておくことにします!
杜氏、ダメですか?