先日、とある用事でまた広島に行ってまいりました。
そして、気になる蔵をまた見学。
「蓬莱鶴」さんです。
秋田と広島は、まろやかでやや甘口な酒の味といい、
蔵の規模やその分布、タイプ別の清酒出荷量比率のパターン
などなど、いろいろと似ているところがあるのですが、
特に驚きなのは、
マンションで酒を造っている蔵がどちらにもあること。
秋田は、言わずと知れた「ゆきの美人」!!
そして、広島が、この「蓬莱鶴」!!
蓬莱鶴さんには、広島で酒類総合研究所にいたときに、
先生といっしょに見学させてもらったことがありました。
あれは4年前ですから、酒造りそのものが、なんだかよくわかってなかった頃です。
しかしながら、強烈な印象に残りました。
そもそもどうしてマンションで造ることになったのか?
蔵の跡地にマンションを建てたわけなので、普通に考えれば、
もう酒造りはやめて、マンション経営でやっていこうということだったはずなのです。
ただ、「蔵を畳もうという話になったとき、そういうものかと思ったが、
はたと、もうこれから酒造りが、できなくなると思ったら、
なぜだか、どんなに少なくてもよいから、
無性に酒造りを続けたくなった」
と原社長はおっしゃっていました。
そこで、借り手のいないマンションの地下を、自分のスペースにし、
好きなように、造り変えた、ということなのです。
工学に長けた原社長は、なんと前代未聞の、
ゴアテックスを利用した、断熱と通気性に富む「布の麹室」を作り上げました。
ほか、釜場と洗米場、5℃の部屋があって、仕込みを行います。
こうしたミニマムなスペースで、
100キロ総米という小仕込みで、原社長は、
吟醸を、奥さんとほぼ二人で、仕込み続けているのです。
もちろん、四季醸造!
(ちなみに、このゴアテックスの麹室は、フジワラテクノアートという醸造機器メーカーが、
参考にして、「VEX」という完全無通風の、最新型の製麹機を造るときのヒントになったということ。
ゴアテックスは、湿気を逃がし、熱を逃さないので、麹室や、麹の保温には、うってつけの
材質なのです)
完璧な手作りですが、瓶燗機、洗瓶機、搾り機まで、自分で設計したか、それでなくても
相当にカスタマイズされており、とてつもなく合理的に仕事ができるようになっています。
まろやかな味わいと華やかな香りが特徴の「蓬莱鶴」が、
こうしたこじんまりとしたスペースでできるというのは、感動的です。
昔、「こんなところでは酒はできない」と言われたそうですが、
ところがどっこい、人間、できないことはないんですね!
なにしろすごい、そうそうたるメンツが揃う「賀茂鶴会」での
自醸酒コンテストの、トロフィーです。
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この蔵では、また勇気をいただきました。
ありがとうございます。