イギリスから帰りました

やっと長い出張から帰りました。
実は秋田県の数蔵が集まって行っている、対英輸出事業のため、
イギリスに行っておりました。

渡英中、他にも別件の仕事がありまして——

東京は亀戸にある(&東京駅地下グランスタ、表参道ヒルズ、麻生十番にも店舗がある)
「はせがわ酒店」さんの、イギリス支店が開催した「ロンドン利き酒会」というのが
ありまして、審査員として、こちらにもちょいと参加してきたわけなのです。
審査方法はもちろん、銘柄名を隠しての審査、ブラインドテイスティングでした。

審査会審査員控え室@ロンドン三越/レストラン三越内

$蔵元駄文-審査会現場


審査会結果発表、一般利き酒会(「伯楽星」さんが、酒造りの解説をお客にしているところ)

蔵元駄文-はくらく

そんなこんなで滞在一週間にもなる長期の出張になりましたが、
まず、利き酒の結果は??
山形の小関敏彦先生、福島の鈴木賢二先生、高知の上東治彦先生という日本最高クラスの指導員
プラス、はせがわ酒店社長 長谷川浩一氏の4人の集計結果が発表されています。

引用もしちゃいましょう。
各部門80銘柄以上の応募があり、全240程度の本数が集まったようですが、
BEST10は—

A、純米大吟醸クラス(四合瓶2001円以上/精米歩合50%~)の部
 1 「文佳人」 純米大吟醸 株式会社アリサワ
 2 「雨後の月」 純米大吟醸 相原酒造株式会社
 2 「獺祭」 磨き二割三分 純米大吟醸 旭酒造株式会社
 4 「十四代」 龍月 純米大吟醸 高木酒造株式会社
 4 「上喜元」 純米大吟醸 酒田酒造株式会社
 4 「獺祭」 磨き三割九分 純米大吟醸 旭酒造株式会社
 4 「東洋美人 壱番纏」純米大吟醸 株式会社澄川酒造場
 4 「醴泉」 純米大吟醸 玉泉堂酒造株式会社
 9 「亀泉」 貴賓 純米大吟醸 亀泉酒造株式会社
 9 「蔵粋」(くらしっく) 純米大吟醸 小原酒造株式会社
 9 「白岳仙」 特仙 純米大吟醸 安本酒造有限会社
 9 「早瀬浦」 特吟 純米吟醸 三宅彦右衛門酒造有限会社
 9 「飛露喜」 特撰 純米吟醸 合資会社廣木酒造本店
 9 「松の司 黒」大吟醸純米 松瀬酒造株式会社


B、純米吟醸クラス(四合瓶2000円以下/精米歩合60%~)の部
 1 「明鏡止水 m’09 純米大吟醸」 大澤酒造株式会社
 2 「あぶくま 純米吟醸 山田錦」 有限会社玄葉本店
 2 「磯自慢 純米吟醸」 磯自慢酒造株式会社
 2 「金紋会津 純米吟醸」 会津酒造株式会社
 2 「銀嶺月山 純米大吟醸」 月山酒造株式会社
○ 2 「佐藤卯兵衛 純米大吟醸」 新政酒造株式会社
 2 「十四代 純米吟醸」 高木酒造株式会社
 2 「正雪 山影純悦 純米吟醸」 株式会社神沢川酒造場
 2 「東北泉 特別純米」 合資会社高橋酒造店
 2 「美丈夫 舞 純米吟醸」 有限会社?川商店
○ 2 「まんさくの花 純米吟醸」 日の丸醸造株式会社
○ 2 「ゆきの美人 純米大吟醸」 秋田醸造株式会社



C、純米の部
 1 「伯楽星 特別純米」 株式会社新澤醸造店
 2 「雨後の月 特別純米」 相原酒造株式会社
 2 「楯野川 中取り 純米」 楯の川酒造株式会社
○ 2 「ゆきの美人 純米」 秋田醸造株式会社
 5 「義侠 1500kg仕込 純米 原酒」 山忠本家酒造株式会社
 5 「紀土 純米」 平和酒造株式会社
 5 「蔵粋(くらしっく) 純米」 小原酒造株式会社
○ 5 「白瀑 特別純米 原酒」 山本合名会社
 5 「美丈夫 純米」 有限会社濱川商店
 5 「飛露喜 特別純米」 合資会社廣木酒造本店

秋田の酒にはマルをつけてみました。
おっとNEXT5の3蔵と、「まんさくの花」が入っていますね。
ここに入ってるうちの「佐藤卯兵衛」は県内版(山田錦使用)と県外版(酒こまち使用)が
ありまして、こちらは、県外用=日本名門酒会限定版のほう。
順位悪くなかったみたいでほっとしてます。
さすがに「ゆきの美人」は安定した評価ですね。自分の採点をチェックしても1つけてましたよ。
白瀑さんの特純、まんさくの純吟も
無論、旨かったです。

蔵元駄文-いそ


蔵元駄文-くえーじ

まあ、「十四代」さんとか「飛露喜」さんとか「九平次」さんとか、「磯自慢」さんとか
「東洋美人」さんとか「上喜元」さんとか、
「はせがわ酒店」さんと長らくお取り扱いある超有名銘柄の出展が多く、
秋田をとっても、情報が行き渡らずに、そもそも出展した蔵元が少なかったのですが、
この会は特に、同社と取引がなくても、参加するにはまったくかまわないという
利き酒会ということなので、今後、もっといろいろな蔵が参加して競い合うと、技術向上に
結びつくかもしれませんね。

市販酒の出来を競い合うコンテストは、他にもあります。
同じくロンドンで開かれる「IWC(インターナショナルワインチャレンジ)」とか、
アメリカで開催される(今年は日本らしい)「Joy Of Sake」とか。

これらは、きちんと運営されているものなので、安心なのでしょうが、
世の中にはいっぱい、市販酒のコンテストや利き酒会があります。そして、
これが一位、あれが二位、と賞が決められて、売り上げに貢献したりしなかったりするのですが—–
時々、ふと思うこともあるのです。
「こういう会に出品した酒って、すべてが、本当に、市販されている酒と同じなのか?」
疑うわけではないですが、そこは、主催者はきちんと確認を取るなりしたほうがいいと思います。
市販酒といえコンテストの酒は、蔵から直接送られてくるものになるのですから。

まさか、全然まったく違う酒—–例えば、
ある市販銘柄の純米大吟醸を出品しておいて、中身は実は出品酒クラスの、原料米は同じでも
精白はもっと上の酒だったとか—–

まあ、そんなことはおのおの、地元老舗として頑張ってる各造り酒屋のメンツにかけても、
断じてありえないとは思います。
しかし、一方で、最近は多くの蔵が、他業種の中~大資本の会社に買収されています。
そういう会社も、立派なところが多いのでしょうが、仮に、大企業的な、冷徹な資本主義が
今以上にまかり通るようになるとすれば、今の状況も様変わりしてかもしれません。

話は戻りますが、あからさまに違反な出品をすることはないとしても、
判断に困るのは、
同じ酒でも、出品したのはきちんと冷蔵管理とかしたものだが、実際の流通してるほうは、
蔵の事情で、もっと温度が高いところに保管しているものとか—–、こういうのはありなのか?

あるいは、同じラベルの銘柄なら、現状流通しているものと、ロット(仕込みタンク)違いの酒でも、
OKなのか? 
一番いい出来のロットのものを取り置いておいて、好きなときにそれを出品するのはありなのか?

造りすぎた在庫がいっぱいあって、新酒の出荷は相当先の酒なのに、新しいヤツを出品するのは?

などなどなど、山のように疑問が出てきますが、どうなるのでしょうか。

このように、市販酒のコンテストは本当に難しいように思います。
ワインは同一の畑からとれた葡萄で、タンクごとの出来不出来があまりなく、
全部一緒の貯蔵法—–とかなので、こういう混乱は少ないと思うのですが、
なにしろ日本酒は、製法から管理法まで複雑極まるものです。

半端な審査体制では、信頼性に欠けてしまう面があるのではと危惧すること少なからずです。
主催者としては、少なくても、賞を与えた酒くらいについては、その出品された酒と、
その時点で、一般に流通している同じ銘柄の酒が、同一のものだと目をつぶれるぐらいのレベルにあるか、最低限トレースすべきでは、と思わなくもありません。
あるいは(相当手間ですが)主催者がちゃんと店から買って、代金を蔵から
請求するとかでもいいでしょう。

顔(ラベル)だけ同じで、実際に流通している酒と、出品した酒がまったく違うとかいう
ことが起こったら、お客の信頼を徹底的に損ねることになります。
不手際をやった蔵だけが責任を負うならいいですが、全体の迷惑になるのだけは
困りますよね。日本酒振興のためのコンテストが、ひょんなことから逆効果になってしまう、
それだけは避けなくてはならないと思います。


そういうわけで、市販酒のコンテストということでは、業界団体とかよりも、
実際に市販酒で商売している、このような酒販店が主催するタイプのコンテストのほうが、
小回りが利いて、信頼性が置けると思うのです。
普段扱っている酒がメインなのだから、主催者は一発で見抜けます。なにか違和感が
あったら、とことん追求できるわけです。

と、ここまで書いてまいりましたが——、
いきなり暗い話題になってしまい申し訳ないです。
うーん。各種団体のみなさんも、
日本酒振興のために中立的な立場で、一生懸命やっているはずなので、
水をさしたりする意味で書いているわけではないのです。
やや、厳しくしないとならない部分もあることは、みなさんご存知だと思うので
改めての意味で問題提起させていただきました。

さて、肝心の、JAPAN MATSURI(ジャパンマツリ)など、日本文化で盛り上がった
ロンドンの話は、また次回にでも。

蔵元駄文-マミー

ps.
あ、渡英中に、2010 Autumn collection “The Beginning”の
チラシが出来てました~
iphoneで撮った画像ですみません。


$蔵元駄文-チラシ