NEXT5 共同醸造酒報告8 留&2日目 

さて、感動的なNEXT5 “The Beginning” の留仕込みの模様をお伝えいたしましょう。

まずは、皆が蒸し上がりに合わせて集まりました。
・「一白水成」渡邉康衛くんは、その前日の原料処理にひきつづいて、今日は釜担当。
蒸し上がりを確認して、米を掘り出す作業です。

・「春霞」栗林直章さんは、仕込みの調整。春霞の仕込み水を使って、水麹を造り、
その温度を測り、必要な蒸米の温度を計算し、その通りに調整して、
留仕込みを完成させます。

・「ゆきの美人」小林忠彦さんは、栗林さんの計算した蒸米温度に米を冷ますべく、
米の温度チェックと、放冷機の操作指示を担当。

・「白瀑」の山本友文さんは、米担ぎ。
 そして私も仲良く、米担ぎ——

ということを、お昼に、近くのローソンの店内のカウンターで、
コーヒーを飲みながら、決定。しかも仕込み後は、検討会議を
おはしカフェ「ガスト」で行うことに決定。
渡邊康衛くんは、前回食べてうまかったという、
「ステーキの和膳 特製薬味ソース」999(税込1,048円)を食べることに決定
(後に現場にてカルボナーラに変更)。
そして、留の仕込み温度と、投入する蒸米の温度も決定。

小林さんの酒母は、超パワフル。
「生きているか死んでいるかわからない、新政の酒母」(by 小林さん)と違って、
ガツンガツン立ち上がることは確実なのです。

*ちなみに—–当蔵の酒母は、たいへん手間のかかる育成法を採用してます。
大正時代の秋田流低温長期酒母をベースにしているので、たいへんマイルドな酒母なのです。
酵母、死んでいません、ちゃんと生きていますから! あしからず—–

さてさて、三段仕込みのうち、添~仲仕込みを終えてみての感想では、
かなり活性が高くて(酒母育成日数が短いのもあり)、簡単には抑えがききにくい状態。
開栓した瞬間、三分の二がふっとぶ活性にごり酒のごとき、迷惑なほどに旺盛な発酵を、
今、まさに開始せんと、酵母たちが待ち構えています。

「あの調子だと、留で温度が高くなると、もろみ一週間くらいで終わりますよね」(私)

「そんなことになったら、来年この企画ないぞ」(ゆきの美人:小林さん)

「GPS機能で、他人の居場所が探索できるんですよ。怖くないっすか」(一白水成:渡邉くん)


などと、ブルボンのアルフォートをつまみながら、真剣に相談した結果、留温度は、なんと5度に。

*ちなみに普通は、留温度は、高級酒で6~7度です。
当蔵でも、5.5度くらいは結構ありますが、5度にはしません。
酵母の立ち上がりが遅れすぎて、逆に、もろみが長期化しすぎるからです。
たとえば今回の「Beginning 2010」の場合、仮にもろみが長期化して、
35日とかになったら、12/24発売は不可能になります。
酵母が立ち遅れたら、大変。適度な発酵状態を保ち、できれば28日、
長くても30日で搾る必要があります。

仕込み温度が決まったので、あとは、栗林さんが、酒屋方程式を用いて、すばやく計算。
「えー、水麹が4度くらいだから、(5-4)×5+5で、蒸米は10度くらいかな」

そして、釜場に集まると、ほどなく米が蒸し上がりました!

さっそく釜の足場に飛びあがり、引き裂くように布を剥いで、
自分の限定吸水した米の蒸し上がりを確認し、その実に「首席的な」出来上がりに、
狂喜する渡邉康衛くん!


蔵元駄文-首席男

「Shirataki マリナーズ」の帽子を被り、臨戦態勢の山本さん。



蔵元駄文-しらたきマリナーズ

あとの人の写真を撮るのは、忘れました!

原料処理も良く、蒸米の出来は申し分ありませんでした。
酒母も麹も、強めのが組み合わさって、バランス的には、たいへん良好。
あとは、もろみの立ち上がりをうまく誘導できるか?
そのために重要なのが、この「留」仕込みなのですが、さて、温度は?

結局、留温度は、5度ジャスト! さすがの手練たちです。
ただし、部分的には、5度を切っており、
厳密に言えば、4.8度、いやもっと下ではないか—-? とも見える、
極低温の留になりました。


「これ—–やっぱ、低すぎません?」(私)

「うーん、うちでもこんなに低いのはやったことがない。ちょっと怖いね」(春霞:栗林さん)

「全然、酵母、来るって! ここの弱っちい酒母と違うから(←しつこい)、余裕で来るよ!
もっと低くてもいいくらいだ!」(ゆきの美人:小林さん)

「そうスかねえ——昔、広島の研究所で、遊びで4度の留やったことありますけど、
あれはサイズが小さかったから、なんとか盛り返したけどなあ—–。春霞では、最低、
何度くらいの留やったことあります?」

「うちでは、低くて6度」(春霞:栗林さん)

「ですよねえ—–」(私)

「大丈夫だって! 賭けるか? このもろみ、明日、米、背負ってたらどうする?」(ゆきの美人:小林さん) 
*背負う(しょう)=留仕込み後に、酵母が増殖発酵して、ガスで蒸米を押し上げて、
もろみの表面に米が浮かぶこと。

そこへ、留後のもろみの物量を計測に、当蔵の鈴木隆杜氏がやってきました。

「鈴木杜氏~! このもろみ見てよ、これ、米、明日、浮き上がってくると思う?」(私)

「これは—–ッ? (真剣な顔で)危険だ。
うちでは、5度前半台の留だと、翌日、100%上澄み状態で、米、浮き上がってこないっす。
この様子だと、明日は、まずもって、米は沈んだままでしょう。
米が上がってたら、一日『ゆきの美人』で、ただ働きしますよ! まじで!」(当蔵の鈴木隆杜氏)

「うーん、私も、背負わないと思います—-」(私&春霞:栗林)












蔵元駄文-2日目


翌日、見事に、背負いまくりました。

しかも、米が浮き上がったどころでなく、部分的に、ぶつぶつ発酵しているのが確認できます。
ヤバいので、アルミの筒に氷を入れて、ぶっさしてます——-。

予約された方へ:
ちなみに温度は、今朝からガッツリ抑えてますので、安心してくださいね。

いやあ、小林さんの言う通り、めちゃくちゃ低い留にしておいて良かったです。
私のメンツにかけても、もろみ一週間では終わらせません—–。
きっと—–