私の育成中の出品用純米大吟醸酒である「見えざるピンクのユニコーン」。
ほったらかしで、勝手に育ってたのですが、ついに——
実験的・濃厚仕込みの「α」に異変!
あまりにもろみが甘く(酒度も相当マイナス。ブドウ糖濃度も高すぎ)、
いよいよ酵母がへばってきました。
フツーのきょうかい6号を、カプ系六号より多めにして(k-6:六號改=6:4)、
仕込んでいるので、かなりパワーあるはずなんですが、温度を下げると、
活動が止まる—–。これは、たいへんにヤバいです。
これぞ、いわゆる酒屋用語で「切れない」状態。
(発酵が弱体化し、糖化作用に負けてしまって、
結果として、糖分が残り過ぎ、甘すぎる酒になりそうな状況のこと)
これこそ、あらゆる造り手が忌み嫌うパターンですよ。
まあ、アル添が可能なら、ある程度までいったら、どんとアル添して
酒をキレイにして、一気にバランス良いところまでもろみを持って行くので、
甘みが残っても別にいいんです。
一般的な大吟醸製法だと、
アルコール15%後半~16%前半、マイナス3~5くらいという甘口で、アル添。
そうすると、アルコール度数が17%前半で、酒度で+3~5くらいになります。
あら不思議、スカッと爽やかな、キレの良いお酒ができあがり。
でも、こっちは純米。酵母が自ら糖分を食い切って、アルコールを自分で出して、
最終的に甘過ぎない、辛すぎない、バランス良いところまで持って行かないとならないので
難しい。
もう、この「α」、酒度でラストに+5とかもってくの、無理。
アルコールも、出て16%後半かなあ。このまま行くと、搾る時、
酒度でマイナス5~6くらいで止まってしまいますよ。
もっとアルコール出そう、糖分を食わせて切らせようと、
無理に酵母を頑張らせると、彼ら、どんどんと絶滅しはじめてしまうのです。
比類なく麗しい、まさにリンゴとバナナの香りに包まれていたもろみが、
ある日を境に、腐った山羊肉の汁やら、温泉の硫黄ガスそっくりの臭いやらを、
絶え間なく放出する、バイオハザード汁、ゾンビ・リキッドと化します。
もう、タンク一杯の無限ともいえる数の酵母が、リアルに、今まさに死んでいます感120%。
実に、造り手のみなさんは、あの悪夢のような朝を誰しもが体験しているでしょう。
朝、眠い目をこすってもろみをのぞいてみたら、
なんだか、臭い。なんだ、この臭いは!!
というか、臭すぎる! イエス、臭い!! これ夢?
ちょっと待て、このもろみ、特A山田錦35%精白、750(ナナハン)kg仕込みだぞ、
タンク一本、いくらすると思っているんだ? だから明〇酵母は〇〇で〇〇〇!!
え? うそ、これ9号だっけ?
ああ、あれはもう御免ですよね、皆さん。
あれだけは避けたい。
どうしよう????
まずは、酵母にストレスを与えているこの糖濃度を
低くしてやる(=水を投入してもろみを薄める)のが必要です。
しかし、酵母の余力がない場合は、効果があまりない。
酵母が死なないうち、あきらめて搾るということを心がけるのが
最善の方法なんですよね。
でも。
実は、設計している時から、最悪、発酵がスタック(停止)するか、
良くても、切れなくなる可能性が高いと予想がしていたので、「Ω」があるんです。
Ωは麹歩合が少なく、酒質はスカッとキレイ。普通の造りよりも
手が込んでいますし、酒質も実際、美しいと思います。
酸度も低く、それに伴って、バランス上糖分も少なくて済むように設計しています。
(といっても市販酒よりは多いです)
酵母はさほどこのもろみではストレスがありませんので、
低温でも楽々に発酵を続けています。
あー、良かった。いえーい。
でも、Ωは、酒質的にはあまりにもおとなしすぎて、これはこれで問題がなきしもあらず。
インパクトが弱すぎる。
Ωの経過表
↓
この2つ、どう持って行くか?
最終的に、ブレンドすればいいという、選択肢が無論あるのですが、
技術で、αを立ち直らせて、αで闘えれば最高だなあと思います。
でも、もろみが腐肉汁になるのは御免だし。
難しすぎますが、頑張ります—