ピロリ菌と私

地震から一ヶ月が経過したということですが、いろいろなことがありすぎて、
まだ一ヶ月しか経っていないのが信じられません。
3/11を境に、異次元に突入したかのような感じがいたします。
この世界は、3/10と同じ世界で、まだ本当に一ヶ月しか経っていないのか—-。

あまり暗い事とか地震関連のことは書かないようにしておりますが、
改めて亡くなられた方にはご冥福をお祈り致します。





さて、ここ数日の近況ですが、
私、胃炎の検査でピロリ菌検査をしてもらったんですね。

私の母親の胃にはピロリ菌がいたらしく、治療に薬で滅菌したというのを聞いていたので、
私の腹部にも当然、いらっしゃるものと信じておりましたが——-

いなかったんですね、まったく。驚きました。

ピロリ菌の検査は、とある薬を飲んだ前後の呼気を採取するのです。
炭素の同位体を含む「尿素」の薬を飲んで、呼気に、その炭素の同位体が
あるレベル以上の量、計測されたら、つまり、この尿素薬が、胃の中で分解されていたら—-
晴れてピロリ菌ホルダーじゃないの? ということになるみたいです。


さて、ピロリ菌が、なぜ強烈な胃酸の中でも、生きていられるのか?
これこそ、尿素を分解できる力を、ピロリ菌が持っているためなんだそうです。
ピロリ菌は、ウレアーゼ(尿素を分解する酵素)を分泌することで、胃の中で
生きていられるんですって。

ウレアーゼという酵素は、尿素を、二酸化炭素と、アンモニアという物質に分解することができます。
(尿素+ウレアーゼ → アンモニア + 二酸化炭素)

そして、この時出てきたアンモニアは、
塩基性物質(水に溶けるとアルカリ性になるもの)なので、酸を中和することができます。

ピロリ菌は、この塩基性物質を身にまとう事で、常時、強烈な胃酸
を中和しているのです。
こうして、かろうじて、唯一、超強酸性の胃の中で生きていける生物と
なっているのですね!
(胃酸は、なんと塩酸が主成分。胃の細胞は、塩素イオンと水素イオンを
結合させて塩酸を造り出しますが、人間の体もすごいですね)

* ちなみに、日本酒造りでも、ハードな乳酸菌汚染が起こった場合など(つまり腐造……)、
あまりにも酸度が高くなり過ぎて、まったく飲めなくなってしまうことが
あります。そんな時、このアンモニアが、救済のためのアルカリ剤=中和剤、つまり除酸剤として
使用されることがあります。
とはいえ、現在では、そこまでのハードな汚染は珍しいです。致命的な腐造は滅多にないですし、
除酸剤が使用されるのは、相当に珍しいことになっていると思います。ちなみに
ワイン醸造では、もとから酸が高すぎるためか、除酸はけっこう頻繁に行われますが、
このアンモニアは使わないようですね。



話は戻りますが、このタフな生物は、私の胃の中には、おりませんでした。
ピロリ菌は、井戸水などの中に棲んでおり、上下水道が完備していなかった頃、
高頻度で人間に感染したということです。猫や犬にもいるらしいので、
たぶん、土壌を通じて、菌が浅井戸なんかに侵入したのでしょうね。

ということで、60歳以上の年配の方は、かなりの頻度で感染しているらしいのですが、
上水道が完備された時代以降に生まれた、若い人には、ピロリ菌は、あまり見られないのですって。
医者曰く。

そして、このピロリ菌、大人になってからは感染しないというから、すごい。
大人がピロリ菌まみれの水を飲んでも、急性胃腸炎で終わってしまい、ピロリ菌は胃に
棲み着く事ができないらしいんです。
でも、子供の頃に、汚れた水とか飲むと、かかっちゃう—-。
ピロリ様に、めでたく宿主指名されちゃうわけなんですが、
まだこのメカニズムはよくわかってないらしいです。

なんとなく、山廃/生モト酒母っぽく、ないですか? どこがどうとかいうことはないんですが。
(なんでもかんでも酒に、結びつけてしまい、失礼)

しつこく酒に結びつけますと、まだまだ話はつながります。(もういい??)
まあ、また次回。