紫八咫(むらさきやた)の生まれる風景

再仕込み貴醸酒「紫八咫(むらさきやた)」—–

当蔵の実験ラインである限定製品「秘醸酒」の中でも、一番コスト高の
蔵泣かせの製品「紫八咫」が、仕込み準備に入りました。

この製品、「貴醸酒」(酒を加えて酒を仕込む)を使用してまた「貴醸酒」を造る
という、頭がこんがらがる四次元的な仕組みのお酒なのです。

つまり。再仕込み貴醸酒とは、「『酒で仕込んだ酒』で仕込んだ酒」です。
正直、早口言葉みたいで、まったく意味わからないでしょう?
私も説明が成り立っているか不安になってきました。
えー、自分のためにも、もっとわかりやすくしましょう。

・貴醸酒=「仕込み水」の一部分、あるいはすべてに「酒」を使う

・再仕込み貴醸酒=「仕込み水」の一部分、あるいはすべてに「貴醸酒」を使う

この違いです。
貴醸酒が、そもそもコスト高(当蔵の貴醸酒は純吟を入れる事と決まっているので、単純計算で大吟くらいの値段になってしまう)なのですが、
再仕込みは、その貴醸酒をふんだんに投入して酒を造るので、目ん玉飛び出るほど高くなります。
(本当に飛び出ますよ、私の目玉も。場合によっては脳みそごと、秘孔を突かれたように。
このまま景気が回復しないと—–)

そもそも貴醸酒は、10年くらいはフツーに持ちますので、この「紫八咫」については、
造った酒は、一年は熟成させたあと、年間ですべて売り切れさせず、
ちょっとづつ発売させていただきまして、ヴィンテージ価値を高めていこうと思っています。

このような、私たちの、
無謀な・あまりに趣味的な・いきあたりばったり・実験しすぎて味が毎年変わる・
発売予定が守られない、このプロジェクトに、辛抱強く、怒る事もなく、
ただひたすらにつきあっていただける特約店さま、ありがとうございます。

この間は、さる酒販店さまに、

「秘醸酒は、いいよね~~~キワモノだもんね~~。
他の製品とかぶらないのがいいよね~~キワモノだから!」


と、激賞されて、ありがとうございます、少しへこみました。
同時に白瀑さんのことも大変褒めてらっしゃいましたね。
ということで、白瀑の「ど」。新政の「秘醸酒」。
いずれもよろしくお願いします。
(写真は、いまでやさんと天洋さんのHPからお借りしました~)

蔵元駄文-どくろ

蔵元駄文-秘醸酒


下の写真は、我らが杜氏が、一年熟成した21By「陽乃鳥」をタンクに投入しているところ。
四合瓶を逆さに、穴のあいた台に突き刺して、タンクに中身を空けているのですね。

ちなみにこの21By「陽乃鳥」は、実は20By「青やまユ」を使用して造られていました。
言う機会がなかったのですが、実はそうだったのです。

アレは、たしかDancyuの取材が来ている時、昨年の2月かな? こうやって、
「青やまユ」をタンクにあけている真っ最中でした。
その時、貴醸酒造りに、入れる純米吟醸がなくって、青やまユを入れるハメになったのでした。

「青やまユしかねえべ—ああ~もったいない」
「なんで、初年度の設計で、フツーの純米クラスで良いことにしなかったんですか?」
「勢い!」
みたいな感じで、タンクにあけていましったけね。

ちなみに、あの時撮られた写真は、その21By「陽乃鳥」の添桶を囲んで—-
というシチュエーションだったことを覚えています。

*ちなみに「陽乃鳥」について。今季の22By貴醸酒から、諸般の事情で名前が変わりまして、
名称が「茜孔雀」(あかねくじゃく)となりました—–。もう生酒出ていますが、今後とも、
よろしくお願いします。


蔵元駄文-再仕込み中

これが、空けている最中の、21By「陽乃鳥」。美しい黄金色で、甘っ濃い、
スミレとハチミツの香りが混ざったような芳香が漂っています。

21Byものは、初年度の20Byものと、また違う個性的な香味で仕上がった作品でしたが、
甘み豊富で濃密で、味の統一感もあり、完成度高かったと思います。
明後日の留仕込みで、すっかり使用されることになります。

南無—-。また生まれ変わってくださいまし。


蔵元駄文-陽乃鳥

あとは貴醸酒大好き人間の、鈴木杜氏がうまくやってくれるでしょう。
実は、私は貴醸酒のもろみは、コントロールできません。

目眩がするような異様な経過をたどるのです。
貴醸酒のもろみほど、操るに難しいものは少ないのですが、彼にとっては、
もうこれで4回目となりますし、相当、手馴れてきているみたい。
実際、貴醸酒についてはすでに一家言持っております。

今度、4/26~27の醸造協会主催「第97回 醸造技術セミナー」で、鈴木杜氏が、造り方など発表するので、同業者の方はぜひ来てくださいね。
*まあ、うちが試行錯誤したやり方なので、オーソドックスな製法ではないと思いますけれども—。

ではまた。