(前回までのあらすじ:
大事な三段仕込みの仲仕込みで、目標仕込み温度を4℃も下回るという大失態を忘れるべく、
「一白水成」「而今」の一升瓶を5人で大量に飲みまくった我々。
完全に泥酔して、温泉宿にたどり着くと—)
隙間なく敷き詰められた布団を見て、さっきまで仲良く酒を酌み交わしていた我々は、
ひどく憤慨をはじめ、ついには激昂して叫び出しました。
「この宿、俺たち以外、泊まり客が一人もいないってフロントで言ってたのに、これはどういうことだ!」
「まちがいなく、康衛君の嫌がらせだ!」
「これを知ってて小林さん、代行でいつのまにか帰ったんだね—-」
「子供ができるでしょ、これ?」
「我慢がならん! もう帰る!!」
などと我々はさんざん悪態をつきながら、浴衣とタオルを小脇に抱えて、大浴場へと向かいました。
体を暖めたあとは、隙間なく敷き詰められた布団に潜り込んで、何事もなく爆睡後、また仲良く朝風呂にゆったりとつかり、朝飯では「白瀑」の山本さんのみ御飯をお代わりし、いつものように定刻を15分くらい過ぎて全員無事に「一白水成」福禄寿酒造に到着!
我々のスタンバイよりも早く—-
すでに、取材のテレビ局などのほうが一足先にスタンバイ!
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我々も、さっそく仕込みの支度に取りかかります。
まずは、昨日洗った米を「一白水成」自慢の、木製甑(こしき)に張り込みます。
そして、蒸し上げ。
普通は、真ん中に小さな穴のついた帆を張って、米を蒸すのですが、
ご覧の通り、「一白水成」では、甑に帆を張りません。
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(逆に、「春霞」では、穴の開いていない帆布をかけて米を蒸すので、
キノコ雲のように帆が膨れます。こういう、蔵ごとにいろいろと製法が違ったりすることを「酒屋万流」といいます)
蒸し上がった米を、甑から掘りだす難役をかって出たのは?
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そう、朝飯をお代わりして元気百倍の「白瀑」山本さん。
ぐらぐらする足場をものともせず、蒸したての米に挑みます。
一方、少し離れた仕込み蔵のほうには—–?
櫂入れ役の「ゆきの美人」小林さん、
そして、運ばれてきた米を担ぎ上げて、足場にのせる私、
それを受け取って、もろみに入れる「春霞」栗林さん、
つれづれなるままに i-phone4をいじる「一白水成」渡邉康衛くんの、
4人がスタンバイしています。
↓
さて、蒸米を待ち受けるもろみのタンクには、すでに留麹と留の汲水(くみみず)が入っています。
事前に、これを計測したところ、
「ん~~、水麹4℃。留の目標はどうしましょう?」(渡邉康衛君)
「6℃でございますか?」(私)
「うむ—」(小林忠彦さん)
ということで、仕込み温度は6℃に決まりました。
今朝は外気も寒いので、このまま放冷機で米を冷やすだけで、
そのくらいの温度で、留仕込ができそうです。
蒸し上がった米を放冷機で冷やして投入、撹拌。
実際、一時間程度に及ぶ留仕込みがすべて終了してみると—-?
「6℃!」(渡邉康衛君)
万歳!!
ということで、無事に予定どおりの留温度で仕込みが終了しました。
(この留温度があまりに低すぎると、酵母の増殖が遅れてしまい、張りのないだらけた酒になってしまったりします。
逆に高すぎれば? 酵母の増殖とアルコール発酵が進みすぎて、荒っぽく雑な酒になってしまいます)
さてさて、以上のような素晴らしい連係プレーで、無事に「Emotion 2011」は留仕込みを終えることが
できました。幸先の良いスタートで、まずは一安心。
これからは、今回のホスト蔵にすべてが手渡され、「一白水成」渡邉康衛君が、もろみ管理をすることになります。
ちなみに渡邉康衛君は、我々の中で唯一の農大出です。
酒造りに関していは、もっとも長く学んでいるサラブレッドのような存在といえます。
そして「一白水成」福禄寿酒造は、もとより衛生的で美しい蔵です。
しかも康衛君が社長に就任してからのこの一年で、さらなる設備投資もしております。
ということで、「一白水成」自体の酒の進化も間違いないというこの醸造期、NEXT5のEmotion 2011も、今まで以上に素晴らしいお酒になることでしょう。
私も時折、もろみを見学に行きますので、その後の進捗もまたご報告させていただきます!
ps、
最後に、ご協力くださった福禄寿酒造の蔵人の皆様、ありがとうございました。