またまた、長い間更新ができませんでした—–。
まだ酒造りも終わってないのですが、出張が入ってしまい、
どうせならまとめて用事をこなしましょうということで一週間ほどの長期出張に。
そんなこんなで時間が過ぎ去ってしまいましたが、ご報告です。
さて、全国新酒鑑評会。予想通り、入賞ならず。
問題は酸度でしょうか。
(もちろん六号酵母×県産米<改良信交>×純米という不利きわまりない
レシピですがそれは織り込み済みなので—)
当蔵の計測では、酸度が1.7くらいでしたが、
同じ酒を別のとある審査会に持っていって調べてもらったら、
なんと
1.85
という数値が書かれていまして、これが正しいなら、コンテストでは「酸浮く」指摘の
オンパレードとなることは必定でした。
(なお酸度は、人によって計測誤差が生じやすい成分値なのです。
それでも、当蔵の酸度の取り方は高いのでしょうか—–)
これから以降はこみいった話になりまして恐縮ですが、
仮に酸度が1.85というと、(うちの蔵の「市販酒」の酸度は、この程度か
もうちょっと高いくらいなんですが)
一般的な「純米大吟醸酒」では、けっこう高い酸度といえますでしょうか。
6~9号などのシングルナンバーでも、精米歩合が40%くらいまで
削れば、普通は
1.6~7
くらいに治まるようなものだと思います。
*酸度に関して捕捉です。
酸度が2.0近くあるような吟醸酒は「酸味系吟醸」と呼ばれているようですね。
米をよく磨く「(大)吟醸」格の酒では、もともと米由来の栄養素が乏しいために、酵母の増殖性が緩慢となるため、酸が出にくくなります。
もろみが雑菌汚染されておらずクリーンな状態ならば、もろみで新たに生じる酸は、理論上
すべて酵母が出すものです。(開放状態で醸造される日本酒では、実際のところ、
こういうことはありえませんが)
酸とは、酵母が増殖のためにエネルギーを獲得しようとする過程で放出するものなので、酵母の増殖性と大きな関係があります。
純米大吟醸クラスにいたっては、酵母はさほど元気よく増えにくい状態にありますので、
(もとから酸を出しやすいタイプの酵母を使ったり、あえて酵母活性を高めようとしない限り)、酸度1.8とかはなかなか出ないはずと思われます。
なお、酸度を高めるためには、麹を多く使うのが効果的です。
麹はたいへんな栄養源なので、これを多く使用すると、酵母はよく増殖して
酸が高くなります。
また、同じように酵母に栄養を与える意味では、硬水を使用しますと酸が
高くなります。特に、マグネシウムやカリウム、リン酸などを含む水は酸が高くなりやすい
です。もろみの温度を高くてしても、酵母は増えるので、もちろん酸がよく出ます。
ということで。
当蔵としては、気をつけて酸度を抑えて1.5くらいを狙っていたのですが、
これにおさまらずけっこう出ましたね—–。
酸度1.8(?)といえば、入賞酒の平均酸度の1.5倍ほどあるので、とうていキツい戦いになると思ってましたが、案の定でした。
なんの札も首にかかってませんね~~
↓
利き酒したら、まあ当蔵の普通の酒で、味はいいんですが、いやー。
さすがにまわりからは浮きまくってました。まだまだだなあ、と思いました。
今回のミスですが、むしろ高い酸度を必要とする当蔵の市販酒に、
傾向としてひっぱられれてしまったからですが、今から思うと、原因はそれだけではない。
なぜ、予想よりも、はるかに高い酸度がでてしまったのか。
今季も新たな知見が得られましたおかげで、今ではかなり判明しています。
端的には、酵母をもろみで元気にしすぎたのが一因でした。もろみの温度は低かったのですが
酵母活性はそれにもかかわらず高かったのでしょう。
無意識にそういう造りになっていたと思われます—-。盲点でした。
たいへん勉強になりました。
来年はもうちょっとコンテスト向きらしいお酒を造る事ができると思います。
さて、純米での出品となった「ゆきの美人」も惜しかったですね。
やはり、コンテストの酒としては酸度が高かった?
しかし、<吐き出す酒>ではなく、<飲んで味わう酒>としてはこのうえなく味のバランスがよく、市販酒としては最高峰なので、素晴らしい酒でした。
そして、我々と同じく、いわゆる「現代的な吟醸香」を大量生産しない酵母で、
しかも県産米、さらには、アル添なしの純米大吟醸酒という不利な条件で出品した春霞さん。
今年は、見事、入賞!
金賞は逃しましたが、銀賞の栄誉に輝きました。
使用した酵母は、ご存知「亀山酵母」!
そうです、昨年末に発売したNEXT5共同醸造酒「Echo」で使用した酵母です。
この酵母は、一昨年前に春霞の蔵から拭き取り検査で採取された酵母ですね。
どうやら性質としては、9号(熊本)系らしいのですが、
9号よりも酸が低いのが最大の特徴。通常、春霞が9号酵母を用いて造るよりも、
格段に酸度が下がるとのことでした。
今回の出品酒も、酸度1.5くらいだったそうです。
コンテスト向きのまろやかな味の酒になり、総合評価で見事「銀賞」に輝きました。
おめでとうございます!
↓
NEXT5組の結果を追いますと—-
なんといっても、大健闘は「白瀑」。酒こまち100%の純米大吟醸で、見事「金賞」を受賞。
素晴らしい快挙です。酵母は、秋田県醸造試験場の開発した最新酵母だったとか?
数年ぶりの金賞ということで、最近の山本氏の実力の向上ぶりが遺憾なく発揮された結果と言えるでしょう。
また、いつもながらコンテストでも安定した実力を誇る「一白水成」(福禄寿)。
こちらも揃って、金を穫りました。さすが!
両蔵とも、まことにおめでとうございます。
↓
そうして本日は、秋田の酒販店グループ「酒和从(しゅわっと)」の開催する
「酒縁 2013」が、開催されました!
かなりの人出で、開催者によりますと、過去最大の人の入りで、予想を上回る動員となったそうです。
当蔵も、ブースをかまえさせていただき、最新作をご賞味いただきました。
たいへん客層も若く、秋田の日本酒熱も確実に盛り上がっているのではないかな?
と思った次第です。
「酒和从」のみなさん、お疲れさまでした—–
来年もさらなる活躍を期待しています~~~!!