26By(平成26酒造年度)(2014ー2015)のスタートです

ご無沙汰しております。
新政酒造も、平成26酒造年度(26BY)、
2014~2015年の酒造りがはじまりました。

私にとっては、はやくも帰郷7年目・・・。
酒造りを、若手メンバーで始めてからは、6年目となります。
現在、製造部門のトップである古関弘は、現場運営の2年目で、
ややなれてきたところでしょうか。造りのメンバーも、皆たいへん
気合いが入っており、ここ数年まれに見る充実ぶりです。
今年は、昨年までの様々な弱点を克服しようと、用意周到に臨んでおります。

昨年の造りで後悔するところといえば・・・
醸造期間が後ろにずれ込んでしまったため、非常に酒造りがしづらい6~7月にまで
仕込みを継続しなくてはならなかったことです。

当蔵は、純米大吟醸クラスの酒などが多くなったり、実験のお酒も増えているので、
仕込みのサイズが小さくなって、仕込み本数ばかりが増えてゆく状況です。
製造量はどんどん少なくなってきていますが、仕込み本数は減りません。

当蔵は、通年雇用の社員で酒造りしているので、ある程度醸造期間を長くする必要があります。
雇用の維持のための仕事を潤沢に用意する必要があるためです。

しかしどんなに長くなっても、6月には仕込みを終える必要があります。梅雨が来ると
麹造りも難しく、蔵の衛生状況も悪化するのでお手上げになってしまいます。

しかし昨年は、設備投資の遅れのため、醸造の開始が一ヶ月以上遅れ、
11月中頃からとなってしまったので、かなりのハードスケジュールの上、造りの
終了がいつもより、かなり遅くなってしまい、相当に難しい酒造りを迫られました。

当蔵は、「平造り(ひらづくり)」といって、
昔ながらの構造の酒蔵です。平面上にすべての作業場が配置されています。
面積が広く、工程ごとの移動距離が長いです。
蔵全体を冷房するなどとうてい不可能です。

(これが、近代では、ビルのような造りにしたりすることで、
工程が上下に配置されて、効率が良くなった上、
全館空調ができたりして、夏場でも酒造りが容易になってきました)

しかしながら昔ながらの醸造場である当蔵は、
暖かい時期に酒造りをするのが、さほどむいてはいるタイプではありません。
あんまり暑い時期に酒造りしますと、なかなかいい酒になりにくいのです。
衛生状態の悪化もさることながら・・・特に「麹」の質が変わってしまいます。
それによって、酒の質が激変してしまう可能性があるのです。

もともと秋田は、冬場は湿気が多い県です。

というか、日本海側は、太平洋側に比べて、湿気が多いのですね。
北西の風が吹く冬場だけでなく、年間通じても、
明らかに湿気が多いとのことです。

湿気が多いとカビが生えやすい。
そして、酒造りに用いられる麹菌もカビの一種です。
湿気が多いと、麹菌がよく繁殖した、しっかりとした麹になります。

ですから、日本海側の蔵の麹のほうが、見た目もパワフルだし、米を溶かす力も強いものになりがちなようです。
製麹中に、麹があまり乾かないので、どんどん菌糸が生えて、強い麹になってしまうのです。
そうした麹で作られた酒は、甘口タイプだったり、辛口でも輪郭がしっかりした酒ができやすいのです。バランスが損なわれると、くどく重くなったりします。

東北を見ても、
日本海側の秋田~山形の酒質と、
太平洋側の岩手~宮城の酒質は全く違います。
秋田はどっしり甘いスタイルだというイメージが多いのではないでしょうか?

ここ数年、秋田県では、どこの蔵でも、ラインナップの上から下まで、吟醸造り(特に
よく乾いた吟醸麹を造ること)を徹底したので、「軽くて甘い」スタイルになったと思います。


全国を見ても、味ががっちりしたイメージのあるのあ、北陸~山陰地方でしょうか。
やはり、湿気が多い傾向があります。
逆に、神奈川、静岡、高知なんかは、イメージ通りさっぱり乾いた味の酒が多いですね。

日本海側ですが、「淡麗辛口」で売っている新潟県など、例外の県もありますし、
食生活の違いからも説明できますが、酒の味の傾向は、気候風土による麹の出来とも
やや関連があるような感じがします。
(ちなみに新潟はもともと、甘口のどっしりした酒が多い県だったようです)

話が飛びましたが・・・・
そういうわけで、秋田は湿気が多いので、ただでさえ麹が強くなりやすいです。
それでもって、平造りの旧式の酒蔵で、梅雨時に近い頃まで酒など作っていると、
酒質を保つのが難しいのです。

そういうわけで、昨季は大変な思いをしましたので、
今年は、ちゃんと10月の頭には仕込みをはじめるように心がけました。
今のところ、頭の2~3本の仕込みで苦戦したくらいで、
なんとか幸先の良い出だしでございます。

今年の当蔵の設備投資の最大の目玉は、瓶詰の充填機です。
(まだ機材は到着しておらず、これから搬入、組み立てになるのですが……)

通常の充填機は、瓶の上部にノズルが降りてきて、瓶の中に、上部から、酒をばしゃばしゃ撒き散らしながら詰めるものです。

しかし、今年、我々が導入するものは、ノズルが一旦瓶底まで降りてから、液面にそって上昇するという手の込んだ動きをするものです。もともと、酸化を嫌うワインや、泡立つといけない「みりん」のための充填機だったそうです。
空気を巻き込まないで瓶詰できるので、瓶詰時点での酸化を防ぐことが可能です。

また、今季は、「やまユ」用に新しい木桶を3つ導入しました。このブランドは
毎年、新しい木桶で仕込みたいのです。

なお、昨年購入した4つの木桶は、今年は精米歩合40%以上の酒に使用します。
その場合は、生モトと木桶の組み合わせとなります。

そうです。
昨年から取り組みはじめた「生モト」が、今年は、かなり多くなってきます。
基本は、「6号酵母」を用いる通常スタイルの「生モト」が多くを占めますが、
折りを見計らって、例の培養酵母無添加の「古式」スタイルもまたやるつもりです。

そして、数年以内にオール「生モト」を達成する予定です。
生モトの技術をブラッシュアップして、誰でも安定的に、
安全にできるスタイルを見つけて、公表したいものだと考えています。

あとは、仕込配合や発酵スタイルにも、かなり過激な改変を行いました。
これについては、また後でお知らせしますが、今までの技術を応用した発酵形式で、
今のところとても有望に発酵しています。
いくらか調整が必要かもしれませんが、間違いなく以前よりも、
さらにエレガントな味わいになると思います。

ではまた。