金賞でした!

応援いただきました皆様、どうもありがとうございました。

今日、午前中に新酒鑑評会の結果が発表され、
なんと、当蔵が金賞をいただくことができました。

今回の出品酒は、
純米酒で、六號系の酵母を使って、
蔵人8人が、4チームにわかれて造るという
トライアル企画だったので、まさか金賞をもらえるとは思いませんでしたが、
どうしたことか、まぐれでいただくことができました。
不思議なことです! ありがとうございます。

今回のもろみは、「私」と「分析屋の三野君」で、担当したもろみで、
米はあきた酒こまちという酒米で仕込みました。
使用した六號酵母については、ふたつの型をブレンドしてます。
どちらも、醸造協会が頒布する「きょうかい6号」ではないですが、まずは、

・秋田県立大学の岩野教授が、自然変異株の中から選別した「新六號酵母」が半分です。
 現在頒布されている「きょうかい6号」自体は、頒布から75年が経過しています。
 わが蔵から摘出されたのが昭和5年<1930年>、頒布開始が昭和10年<1935年>
 なので、培養されるごとに代がわりして、
 今では、雑多な個性を持つ多種多様な株によって構成されているということです。
 
 つまり、継代培養時には、自然に変異が生まれるわけですが(親と子供は違う特徴がある)、
 そういった歴史が生んだ数えきれない無数の変異株の中から、
 特に現代にマッチする醸造適正の優れたものを選抜しなおしたのが、
 この「新六號酵母」、通称「究(きわむ)」酵母です。
 なので、この六號は、「きょうかい6号」を構成する、無数の6号酵母の中の、
 とくにハンサムな6号酵母と言えます。遺伝的にも完璧な、正真正銘の6号です。

・残り半分は、私が前の仕事をやめて、広島の酒類総合研究所に一年半くらい
研究生としてごやっかいになっている時にゲットした酵母「廣島六號」です。
これは、カプロン酸エチル(デリシャスリンゴ様の甘く深い香り)が、
バリバリ放出されるように改造されたものです。
当時は「香り高い酒って、いいなあ」
と思っていたので、うちの「6号」でも、カプエチばんばん出た派手なヤツがあってもいいだろうと、
頑張ってやった実験です。

ところが、およそ同時期に、鈴木杜氏は、秋田県醸造試験場と共同で
同様の手法による、高カプロン酸エチル生産6号酵母「六號改」を完成させていました。
この「六號改」が相当に良い出来だったので、
私が持ち帰った「廣島六號」はお蔵入りだったのですが、
今回、出品酒には、いくらなんでも、ある程度のカプエチは必要ということで、
自分が造るものには使ってみました。
予備実験なしでいきなり使った株なので、大丈夫かなあと思ってましたが、
まずまず予想の範囲内で香りが出たので、結果オーライでした。

*また、このもろみ以外の3つのもろみ(鈴木杜氏、古関副杜氏、伊勢上槽係が、
それぞれ担当したもの)は、「六號改」単体使用のもろみで、これらも
相当な出来映えでありました。これらも秋のコンテストの活躍が楽しみです。



蔵元駄文-金賞

当蔵の4つの酒を忙しい最中、利き酒してくれて出品酒を選考していただきました
秋田県醸造試験場の先生の皆様、そして秋田醸造「竿灯/ゆきの美人」の小林さん、
仕込みに使った酵母である「新六號酵母」の生みの親である、県立大学の岩野君夫教授、
ほか、酒類総合研究所の小林健先生、日下先生をはじめ、お世話になった皆々様
ありがとうございます。


実際は(ブログにに書いてあるとおりですが)、私も出張が多かったりして、
仕込みの段階から、もろみ操作はもちろん、搾り、おりびきまで、相当、
鈴木隆杜氏に頼りっぱなしでした。
もろみに意志がありましたら、「誰がパパ?」と聞いたら、
もしかして、鈴木杜氏を指差すかもしれません—–。
ということで、このもろみは、鈴木杜氏が実務の多くを肩代わりし、
蔵人全員でサポートしながら造ったような代物です。
それだけに、評価をいただけたことは、嬉しいことです。

私としては、
・アル添しなくても純米でいいものが造れるだろう、
・山田錦でなくたって地元の米でいいものを造れるだろう、
・六號酵母のようなクラシックな酵母でも(廣島六號が半分入っているので、その点香りは違うのですが)戦えるだろう。昔の酵母は、味が良いので、そっちで勝負しよう
 ということを、まぐれながらも、自分で確認できたことが良かったです。

いきなりの企画、無理矢理なスケジュール、はじめての酵母、はじめての仕込みタンク—–
不安と失敗だらけでしたが、なんとか乗り切れたのも、
みんなで切磋琢磨しながら、かつサポートしあい酒造りができたおかげだと思います。
無論、出品酒チームの作品は、どれも素晴らしい出来で、どれが出品されても同じように
評価されたと思います。
今後は、他のお酒たちも、秋の「秋田県清酒品評会」、「東北清酒鑑評会」などの舞台で、
良い働きをすると思います。
まだまだ出品酒チームバトルは続きます! 

純米でも、アル添と遜色ないものができると、私は思っています。
そこで、いずれ、もろみの製法についてはできるだけ公開したいと思ってます。
(今回、たまたまうまくいったに過ぎない例でしょうが—–、参考までに。)

ところで、もっと大事な市販酒は?
それが、正念場です。
乳酸菌が暴れてしまった純醸モト「翠竜(すいりゅう)」が、
いろいろな意味で難しいことになってしまったのに加え、
相当頑張って設計した、全麹特別純米「涅龜(くろかめ)」も、なんだか、
いまいちな出来。

これは、めちゃくちゃな若麹を用いて、すべて麹(全麹)で造るという新機軸の酒でしたが、
途中まで素晴らしい出来だったものの、やや水が少なすぎたのか、もろみがあまりに濃すぎて、
最終的には、酵母失速。アルコールが13%ちょっとくらいで発酵が止まってしまいました。
で、はじめの設計とは、かなり違ってしまい甘すぎる酒になってしまいました——。
 
いやはや残念、鈴木杜氏には、頑張って夜中に仕込んでもらったのに!!!
(まあ、搾り立ての味なので、まだわかりませんけれど……。いきなり秋上がり
したりして?)

結局、現時点の味としては、想像とかけはなれたものになってしまい、
どうしても私には納得がいかず、蒸米100キロをその場でくれ、と頼み込み、
そのまま麹室に直行して、造り直すことにしました。

蔵元駄文-麹

もう、あと仕込み2本で終了という最中、
みんなには申し訳なかったのですが、今度こそは! 
と、麹造りを開始してしまいました。

蔵元駄文-床

うーん、でも仕込むのはいいけれど、すぐ出張だし、
うまく行くように、よろしく面倒みてください、鈴木杜氏はじめみなさん。

さてさて、どうなるのやら。
出来は、乞うご期待!?