秋の秋田県品評会にむけて

蔵元駄文-ききざけ風景

昨日は、秋の「秋田県清酒品評会」へ向けての、出品酒選抜のための、利き酒をしました。
この品評会は、来週の中頃に審査が行われるコンテストです。(ちなみに、私も審査員です)

「吟醸の部」、「純米の部」にわかれていて、
「吟醸の部」は上位4銘柄、「純米の部」は上位2銘柄について、
それぞれ優秀なものとして「知事賞」が授与されます。

そして中でも最も良い酒は、各部門の首席として、秋田県醸造試験場長賞をいただくことが
できます。これは素晴らしい名誉です。

昨年は、「高清水」の御所野工場(本社とは別工場)の杜氏である、加藤均さん
(農大卒のすごい手練です! しかも現在55歳で脂が乗り切ってる頃ですね)
が「吟醸」「純米」両部門でW首席になりました。
今思い出しても、これは快挙でしたね。特に吟醸は、ハリがあり、濃密で、後味良い絶品の酒でした。

ちなみに広島での、春の「全国新酒鑑評会」なんかは、
金賞の乱発(全部の1/4がもらえる)で、
(我々造り手的にはですが)やや権威が落ちてしまったので、
こちらの「秋田県品評会」の「知事賞」のほうが、価値ある代物なんです。
確率的にずっと難しいので。さらに、首席なんていうのは、大変なことです。

しかしながら、この秋の「清酒品評会」。
実は、当蔵にとっては、出品するのに迷いがあるコンテストでもあります。

というのも、秋田の品評会の傾向は、いまだに「香りが高く、相当甘く」という
スタイルが(結果的に)評価され、市販酒やトレンドの影響をあまり受けていないスタイルなので、
純米×六号系でやってる私たちにとっては、ちょっと難しい——。

例えば、春の鑑評会のための事前審査。秋田の仲間うちでの利き酒では、
大変良い点をとったのに、いざ広島に送ってみたら「香りが高すぎて入選すらしない」
という酒が、今年はよく出たみたいです。

つまり、秋田では、香りが相当に高いものでも評価され、
香りが高ければ、甘い酒のほうがマッチしますし、酸っぱくない方が甘みを感じやすいので、
結局のところ、秋田の出品酒の特徴は、

・香り高い&甘い&酸が低い という三点に集約されてしまいます。

静岡や山形辺りの、市販酒のトレンドを盛り込んだ、先進的な取り組み
(香りや甘みを制限あるいは、控えめに指導)に比べると、
やや遅れているのかなあと感じなくもないのですが、
そうはいっても始まらないので、頑張って闘わなくてはなりません。

「吟醸の部」には、4点出品できます。
なので、このたびの、バトル出品酒の4本を全部出すことにしました。

「純米の部」は、2点出品できます。
これは、事前持ち寄り会で、試験場の先生に利き酒してもらった結果をもとに選抜しました。
No.76「見えざるピンクのユニコーン」
No.80「梨花」
の順で評価が良かったので、この2本の酒から出すことにしました。

そして、昨日。
酒を採取した斗瓶(袋吊りした酒を、澱が下がるまで保管しておく入れ物)の
番号がついている一升瓶をずらっとならべて、どの斗瓶由来の酒を出品するか、決めました。


斗瓶の番号は若いほど、先に採取されたもので、味が濃厚といいます。
袋の目が詰まってないので、澱なんかも含めて、体積の大きい物質が酒に入ってきます。
一方、酒を通し続けることで、徐々に袋の目が詰まってくると、
酒質はやや綺麗になってきます。ただし、あまり目が粕によって詰まると、
味がまた変化してくるので、結果、2番とか3番とかの斗瓶の味が良い、とされています。

蔵元駄文-オクト

斗瓶取りバージョンの「No.66 オクトパスガーデン」。
(現在、「ネフェルティティ」とともに秋田県内で市販中のものは、これの圧搾機搾り版ですね)
袋吊りでは、古関君は、万全を期して、画像の通り、斗瓶を6本取ったようです。
結局「吟醸の部」には、2番を出すことに決めたよう。

蔵元駄文-ネフェル

斗瓶取りバージョン「No.70 ネフェルティティ」
斗瓶ごとの味わいが、けっこうばらついてて、面白かった酒です。
森川&伊勢組の結論としては、どうやら斗瓶1番の酒を「吟醸の部」に送り込むようです。


蔵元駄文-ピンク

斗瓶取りバージョン「No.76 見えざるピンクのユニコーン」
「吟醸の部」、「純米の部」、どちらにも出しますが、
私の相棒の三野健太君が、斗瓶1番を猛烈プッシュしたので、そうしました。
いい判断だと思います。


蔵元駄文-りんか

我らが杜氏の「no.80 梨花(りんか)」。
斗瓶6本取ってますが、こちらは斗瓶3番を選択したようです。
まとまりはありますが、まだまだ伸びるような酒質で悩むところですね。




感想としては、我々の酒はすべて「吟醸の部」では、評価されないでしょう。
全部純米酒なので、まわりをアル添酒に取り囲まれたら、酸の高さで敬遠されてしまいます。

当然、純米酒は、アル添してないので薄まらず、成分が濃いものです。
酸も、アミノ酸も多い傾向にあるのです。軽快さに欠け、酸が浮き、飲みにくいと
評価されることが多いのです。

例えば、当蔵のこの出品純米大吟醸は、酸度にして1.5~1.8というものですが、
秋田県の吟醸の部の酒の平均酸度は、おそらく1.2~3くらい。
比べると、我々の酒は、相当酸っぱくて、浮いてしまいます。

多種多様な酒が集まる、春の「全国新酒品評会」なら、酸度がちょっと高くたって、
たいして問題ないのですが、
(秋田の純米大吟醸は、九州地方のアル添大吟醸より、酸が低いということがありうる)

こと、秋田の「吟醸の部」となると、一番、酸度が低い私の「ユニコーン」でも、
厳しい闘いになるでしょう。

ただ、純米の部では、そこそこやるのではないか? という気がしてます。
どうなんでしょうか? 我々も楽しみです。



ps.
仕込み中に、事故多発地帯だった、仕込蔵も、仕事がしやすいように
改造終了! 次の造りは、より快適に清潔になるでしょう。

蔵元駄文-完成仕込蔵