繁忙期—-

いつの間にか、繁忙期に—。

なかなかブログが書けなくなってしまいました。すみません。

毎年恒例の出品酒バトルですが、昨年、大地震で仕込みを中断した結果、
今年は仕込みスケジュールが例年よりもキツく、
杜氏と副杜氏と私と三人、自分だけの小仕込みを持つことができなくなりました。
それぞれ、市販の40%クラスの磨きの純米大吟醸を受け持って、
それの袋吊りを、春~秋の各種公的コンテストに出品することになります。

杜氏は、麹に「吟の精」、掛米に「酒こまち」を使用した35%磨きの純米大吟醸。この組み合わせは、県産米の中では究極と言われているものですが、いかに?
副杜氏は、オール「酒こまち35%」の純米大吟醸。満を持してのフル酒こまち。いかに失敗しないかが問われるという、逆にプレッシャーな采配をくらいました。頑張れ!
私は、「改良信交40%」の純米大吟醸。相変わらずのダークホース的な米セレクトになっております—-


以上、それぞれ、すでにアイテム名が冠されている(販路限定ですが)市販酒となるものです。

圧搾機で搾ったものが、すでに存在している市販アイテムとなりますが、
袋吊りの部分を斗瓶に取って、より良いものを出品します。
そして残りの袋吊りの酒を、「銘入り」の商品としてリリースしようかな? とか思っています。

ともあれ。
当蔵の市販酒には、基本的にコンテストで勝つために有利なゴージャスな香りは、
ほとんどありません。
ごくごくフツーの「きょうかい6号」はそういう香りを生産することができないからです。

昨年までは、コンテストで評価の高い、リンゴの蜜のような香り(カプロン酸エチル)を
高生産するタイプの6号=「六號改」(当蔵と試験場で、昔、通常の六号酵母から改良/選抜したもの)を少量ブレンドして、香りを乗っけるようして、出品用の酒を造っていました。

しかし、今年は、コンテスト用に特別に酒を造るわけではないので、
そういう高香気成分生産株を、ちょっとでも混ぜたりとかして使うことはありません。

ということで、うちの市販酒をそのまま出品することになります!
ということは—-?
バナナ的香り(酢酸イソアミル)+セメダイン的香り(酢酸エチル)が主体となる、
香気成分的にはごくごくフツーの酒。
これで、全国新酒鑑評会から秋田県品評会、東北清酒鑑評会まで、戦うというのは、
不利というか、難しいです、正直。

というのも6号酵母は、存在する清酒酵母の中ではもっとも古く、
香気成分もよく言えば穏やか。悪く言えばあんまりあるほうではなくて、
例えば、このカプロン酸エチルという香気成分について比較すると、全きょうかい
酵母中、最低のはずです。
香り重視の利き酒コンテストでは、一番悲惨な酵母だと思います。

でも一方で、6、7、9号とか、こういうカプロン酸エチルをあまり産生しない古いタイプの酵母
(一桁酵母といいます)の酒は、市販酒/食中酒としては、香りに押し付けがましさが
あんまりなくって良いのです。

逆に、コンテストでは、ガツンガツン香りが出ている酒の中に置かれると、
さぞかし、しょぼいことになるでしょう。
(9号酵母は、造り方に寄っては案外、カプエチも出るのでうらやましいですが、
7、6号はかなり厳しいといえるでしょう)

かのように、6号はコンテストでは不利な酵母ですが、
どうせいずれ、こうしなくてはならなかったので、気持ちがせいせいするのも事実です。

(私としては香り高い酒も好きですし、絶対に必要なジャンルだと思っています。
しかし、我々が使用する通常の6号酵母では、逆立ちしても実現できないタイプのお酒ですし、
自分自身を振り返ってみても、市販酒で売ってもいないタイプの酒を、
コンテストのためだけに造るのもどうかなと思っていましたので、このたびはいい機会となりました)

でも、だからこそ、味で評価されたい! 
と真剣に取り組まんとして、まずは鈴木隆杜氏が先陣を切っての麹造り。
吟の精35%で、吟醸麹を造っています!

蔵元駄文-麹箱内部


これは最高温度から6時間くらい経った麹の様子。
やはり高温障害の影響はあるようで、麹菌の発育が遅いようです—-。
たいへん苦心して、ハゼ込ませようと(麹の菌糸を米粒内部に侵入させて、高い酵素力価を
得ること)戦っています。
麹のアップだと、菌糸の付き具合がわかるでしょうか。


蔵元駄文-麹アップ

製麹(せいきく)時間は予想より伸びるかもしれず、60時間くらい?
今日は二晩目の泊まりになるということ—-。
大変ですが、吟醸造りとはこういうものなんですね。
杜氏には、余すことなく職人魂を発揮して、終わったらゆっくり休んでもらいたいものです。


さて、例のお酒がスタンバってます!!
本日はNEXT5メンバーの特権で、製品を先に味見—-。

実際、素晴らしい出来だと思いますね。
仕込み前の意図通りであり、それを上回る完成度だと思います。

はっきりいって、手に入れたほうが良いと断言します。

ゲットに成功された方は幸運ですね。良いクリスマスを!!

蔵元駄文-エモーション